彼氏 卒業編 3

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↓↓↓↓↓↓↓↓ 変わらず吸い込みのいい胃袋に付き合いながら昼食をすませた後、神楽が目をつけたのはこの店のスペシャルデザート。
もうこのくらいで驚きはしない沖田はすみやかに店員を呼ぶと、注文をすませた。


スプーンいっぱいに乗るプリンに口をつける神楽は幸せそうだ。それを見た沖田は笑う。その顔は優しかった。
「最近どうヨ」
頬に生クリームをつけながら神楽が言っているのは、沖田の近況の事。
いつも一緒にいた高校時代とは違い、沖田は大学にいる。
神楽は卒業と同時に、そのいつも隣にあった存在がなくなった事に気づきさみしさをすぐに覚えた。
「別に、ふつう」
頬のクリームを取り除くと、口に運びながらの沖田のそっけない態度に神楽は言葉をつまらせる。
沖田にとって、なにげない事も、神楽にとっては新鮮な事、それをペラペラと話す奴じゃないとは知っているけれど、神楽のなかでモヤモヤが広がった。

高校を卒業したあと、いつも一緒にいた近藤は土方と小さいけれど会社をたちあげた。
それにづづいたように高杉も会社を起こして、今じゃ大きな社長席にと収まっている。
沖田が大学に進学すると知ったとき、何も相談されてなかった事が大きなショックだった。
それでも沖田には沖田なりに何か考えがあるのだろうと笑って今日まですごしていてきたけれど、正直さみしさは、心のなかで増してくばかりだった。

「ふうん」
残ったデザートを喉のおくに飲み込み流し込む。
モヤモヤも一緒に流れていけばいいと思っていたけれど、それは無理みたいだと思った。

店をでた二人は、パーク内にあるショッピングモールに移動した。入った先は雑貨屋で、神楽は連なる商品に目を配らせた。
「オイ」
沖田に呼ばれふりむいた神楽の目の前に現れたのはブタの貯金箱。
「なにアルカ」
およそ沖田の言いたいことが分かっている神楽の顔をみる沖田はイタズラに笑ってる。
「そっくりだろィ」
膨らました頬を沖田は柔らかくつねる。


「おーきた」
不意にかけられた背中の声に、二人してふりむくと、そこには女子大生がいた。
記憶を辿ってみたけれど、神楽の知った顔ではない。けれど、どうやら沖田はそうじゃなかった。
「お前ら何してんでィ」
目の前にいる二人組の女子大生は、沖田に親しく声をかけた。

一瞬で、入り込めない空気だと分かった神楽は、自然と足を一歩さげた。
大学の講義やサークルの話しは神楽にちっとも分からない。でも沖田と、二人の女子大生にはそれは通じる話し。
同じ空気にいるはずなのに、まるで大きな線で区切られているかのような感じがした。
どこをどう切り取っても話しが分からない。せめて笑っていようと思ったけれど、うまく笑える自信がなかった。


「何これ可愛い」
女子大生の一人が沖田の手の中にある物を見つけた。
さっきまでの沖田との会話が、気持ちの中で巡った。ぜんぜん可愛くないのに、さらっと可愛いと言ってしまえる。
いたたまれない気持ちが充満すると、空気にたえきれなくなった様に、他の商品に目をうつる振りして、離れようとした。

「神楽」
かけられた声に、足がとまった。
さっきまで、気にも止めてなかったくせに。そう思うのに沖田の声は神楽の体をたった一言でひきとめた。
「悪りィな」
輪の中心に居た男は、未練もなくその中を飛び出して、自分の元にと戻ってきた。
側に来た温度は、とても柔らかい掌で、神楽の頭をくしゃくしゃと弄んだ。
その仕草ひとつが嬉しいと思う自分がくやしくて唇を甘くかんだ。

見たこともない後ろ姿に向けられるのは好奇心の瞳。あなたは誰? そう言われているのが分かったけれど振り向けない。
「ほら行くぞ」
ほったらかしにされていた愛情が、一瞬で掌のぬくもりに包まれた。
くやしいけれど、たかがそんな事が神楽には嬉しかった。

雑貨屋で買った、ブサイクな豚の貯金箱を手に、神楽は沖田とぶらぶらと歩いた。

一階のフロアから二階に移り、三階へと。
エレベーターを降りた二人の背中に声がかかった。
それはどうやら神楽の方にとかけられていた。斜め後ろを振り向いた神楽。その顔に沖田は見覚えがなかった。
神楽は軽く頭を下げた。
「奇遇だな」
身長は沖田と同じくらい。二人を見比べる沖田の機嫌が目に見えて悪くなるのは一瞬の事だった。
「デート?」
「そうアル」
控えめに頷きながら、神楽は照れたように、男にはにかんだ。
「あっ、バイト先の先輩で、間宮(まみや)さんって言うアル」

言うならば、神楽の教育係みたいなものだけれど、バイト先で神楽がなついているのには違いなかった。

沖田よりも年上で、性格は違うけれど、その容姿は見覚えのある男を思い出させる。

神楽との短い会話をすますとその視線は沖田の方へ移った。
にっこりとも笑わない沖田の肘を神楽は小突いた。沖田は視線を神楽に移すと、もう一度男の方へとやった。
「いつも、こいつがお世話になってまさァ」
大いに作り笑いだと分かるけれど、それを決して隠そうとしない沖田に頭を悩ませた神楽は、早々にこの場を立ち去るのが懸命だと選択をした。


「じゃあな、神楽ちゃん」
間宮の言葉に返すように頭をさげた神楽は、足早に歩く沖田の後をおっかけた。

(本当にもうっ!)
一体、こいつは何様なんだ。ついさっきまで、女子大生と何食わぬ顔して話していたのに・・・・・・。
「沖田、待つアルっ」
早足で歩く沖田の前に回り込んだ神楽は、下から沖田を見上げた。
「さっきの態度は何アル、失礼だって分からないアルカ?」

さっきのはどう考えても、沖田が悪い。
けれど負けじと沖田の機嫌が悪いことくらい付き合っていれば分かる。
もうこの場所にいない人物に謝れと言うのは無理だけれど、せめて自分の非を認めさせてやろうと視線を離さない。

(だいたい、ちょっと銀ちゃんに似てるからって・・・・・・)
不意に巡った感情に心当たりがありすぎて、神楽はもう一度、沖田の顔を見た。
(もしかして・・・・・・)
高校の教師であり、神楽の保護者である銀八を沖田がなぜかライバル視するのは今に始まった事じゃない。
でも、こんな所にまで来て・・・・・・。
「ぷっ」

さっきまで落ちていた感情が、こんなにもちっぽけな沖田のヤキモチでどこかに吹っ飛んでいった。
離れていた手を今度は神楽がきゅっと掴んだ。
「間宮さんは、本当に優しいし常識もあって、沖田とは大違いアルナ」
言いながら、沖田を見上げていると、澄ました表情をして、不機嫌そのもの。
「でも・・・・・・」
言いながら、沖田のシャツをひっぱり、耳を近づけさせる。
「やっぱり、沖田が一番アル」

周りには聞こえなくても、沖田に聞こえるならそれで十分。そんな小さな声で神楽は沖田に囁いた。


ショッピングモールを下の階から上にと巡り、また降りてきた二人は、再びパーク内の遊園地に戻ってきた。

室内に入っていて分からなかったけれど、その間に陽は落ちて、夕暮れになっていた。
「・・・・・・もう、帰らなきゃいけないアル」
楽しい時間はあっと言う間に過ぎていくと言うけれど、本当にその通りだと神楽は思った。
もうすぐ真っ暗になってしまうと同時に、二人一緒にいられる夢が終わってしまう。そう思って声が沈んだ。

「帰りますかィ?」
沖田の言葉に、夢が醒めてしまった気がして、神楽は静かに頷いた。

スピードの早いジェットコースターも、高い高い観覧車も、回るメリーゴーランドも、ここだけの夢の国。
車の景色からそれを眺める神楽は、さみしそうな横顔を見せた。

でもすぐに神楽の口は開いた。
「おきた・・・・・・」
帰り道が違う。来た道に戻らない沖田の車。
「何処に行くアルカ?」

神楽の言葉に、沖田はただ笑うだけだった。



・・・・To Be Continued・・・
Category: 彼氏 卒業編
Published on: Sat,  09 2015 19:03
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