山崎の不運な一日


見つからない打開策

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この船は、もう既に沈没している・・・・・・・・・。

さっきから、山崎はそうぶつぶつとつぶやきながら、箸で掴んだ飯を口に運んでいる。

「おい、山崎」
彼の後ろからかけられた声は、副長である土方の声だった。
どうやら、頼んだマヨの調達物資をご希望のようだ。けれど山崎はそれどころじゃないらしい。
なんせ、訳も分からず神楽の沈没船にのせられたまま、まだ降りれそうもなく、出航してさえもいない。

いつもなら、飛び上がる土方の声も彼には全く耳に入っていない。
それに腹をたてた土方は、散々と山崎に罵倒を浴びせてから、仕方なく、退散した。
次に土方といれかわりに現れたのは、先ほど稽古という虐めをよぎなくされた沖田だ。

さきほどの土方とうってかわって、沖田の顔をみた山崎は、まるで死人でもみたように真っ青になっている。
全ての元凶はこの男だ。沖田さえいなければ、問題なんてふりかからなかったはず。
その顔をみるだけで恨めしくもあり腹ただしい。
けれどそんな表情をみせるわけにはいけない。
そんなことをすれば、神楽なんかよりもっと危なく命の危機に陥ることは間違いない。

この場から一刻もはやく立ち去ろう。そう山崎は、茶碗に手をかけると必死になり、口の中にかっこんだ。

「なんか山崎の部屋から女の声が聞こえるぜ」
と、言った原田の声に、山崎の口の中の米が吹き出した。
何を言っているんだ、空耳だと言いたいらしいが、混乱するあまりその言葉は白米にもみけされているようで、出ていない。

原田の声に、興味津々の隊員達は、山崎の部屋へと足をすすめる。
が、その隊士達を猛スピードで抜き去り、山崎は麩(ふすま)を内側から閉めた。

「な、ななななんにもありません! ここには、誰もいませんよ」
山崎の眼球は血走っている。
そう隠しだてると、逆に怪しいと隊士達は面白がって、外側から部屋を開けようとするけれど山崎はなんとかそれを阻止する。
そして物音が静まる頃、その場にへたりと座り込む。そして部屋に居座る女へと声を漏らした。

「いい加減に出てってくださいよ」
命を拾った山崎は涙目でこんがんしてみる。
目の前にいるのは、寝そべって漫画をよみ、ケラケラと笑う神楽の姿だ。
山崎の声を聞き、起き上がった神楽は、体の関節をならしながらひょうひょうと返答する。

「嫌アル」

全く悪びれていない神楽の様子に、分かっていたけれど山崎は、ガックリと肩を落とした。
あの上司にして、この女だ。
言って分かるほど簡単じゃないことは日頃から承知しているはず。なのに、今日ほど運命を呪いたくなる日はない。

かと言ってこのままこの部屋に居座られても、バレてしまうのは時間の問題だ。命の灯火はあってないようなもの。

そんな山崎の様子を見た神楽は、しばらく考えた後、ヤレヤレと腰を上げた。
「ほら、行くヨ」
「へっ?」
意味も分からない神楽の言葉は、嫌な予感しかしかない。
「潜入捜査に行くアル」

歌舞伎町の町から離れたその場所を見上げる山崎の顔には逃げたいとしか書かれていない。
「ほ、ほんとに入るんですか?」
「当たり前アル」
さらりと言い放った神楽は、その言葉の通り突き進んでいく。

狭いエレベーターに二人きりの空間を、窒息しそうな気持ちで耐えると、山崎はその303と書かれた部屋にと入った。

広いダブルベッドにテーブルとテレビ。
ベッドの脇にある棚には、必要不可欠な四角くばったビニールの中に、薄し出される輪っかの形。
山崎は今更ながらも、ゴクリと唾を飲み込む。

そんなものは御構い無しに、窓際にすすんだ神楽は、どこからか調達してきたのか、望遠鏡を握り締めた。
レンズの向こうに見えるは、向かいのマンション。
カーテンからは、スラリとしたロングヘアの女性がいる。

「神楽さん、やめましょうよ」

オドオドと声を出す山崎の声に神楽は耳を貸さない様子。
(あーもう・・・・・・! なんで俺がこんな目にっ)
今朝、神楽にばったり出会ってしまったこと、声をかけてしまった事を今更、激しく後悔するが時既に遅し。
神楽が見ているマンション。そこには女性ともう一人男がいた。

こんな所を沖田に見られたら殺されてしまう。
あの緋色ばった眼球にするどく睨まれるだけでは絶対にすまない。
内心は、冷や汗ものだが、そう神楽に強くも出られず山崎はハラハラするばかり。

沖田がこのマンションに出入りすることは、山崎を含めて新選組の皆が知っている事。

二週間前、ある女性が被害届けを申し出に来た。
付き合っていた元彼からストーカーにあっていると言う案件。
土方は沖田に護衛を言い渡すと、沖田は面倒そうにしながらも任務についた。

やましく隠していた訳ではない。依頼人の個人情報を外には漏らしてはいけないのは当たり前の事。
ただ正直、神楽に言うと、ややこしいことになると言う頭があった事は間違いなかった。

今朝の神楽の態度から察するに、おそらくいらぬ勘違いをしたのだろう。

それを分かってきたはいいけれど、沖田の口から話されていないことを、ベラベラと自分が話してはいけないことくらい山崎にも分かる。
頭をわしゃわしゃと掻き毟りながら何とか打開策をと考えてみるもその答えが出ないから腹ただしく泣けてくる。

一人騒がしい山崎が、隣を見てみると、嫌に静かな神楽がいた。
「・・・・・・帰るアル」
そう言い残した神楽は、望遠鏡を手から下ろした。
「えっ、ちょっと待ってくださいよ!」
焦る山崎。嫌な予感がしつつもさっきまで神楽の手の中にあった望遠鏡のレンズ越しに向かいのマンションを見た。
そこには、沖田を抱きしめる姿があった。
(あ~っ、もうっ)
なんで俺がこんな目に。
山崎はそう思いながらも神楽の姿を追いかけた



・・・・To Be Continued・・・・・
Category: 山崎の不運な一日。
Published on: Thu,  17 2016 02:08
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2 Comments

めい  

コメント失礼します

更新待ってました(;_;)!!

2016/03/30 (Wed) 22:38 | REPLY |   

ツンデレ  

Re: コメント失礼します

めいさん、おはようございます^^
そして、コメントありがとうございます♪

いつも、面白いものを読んでもらいたいと思うあまり、
なかなか納得のいかないものは、投稿としてあげられず、
お待たせばかりさせてしまって、もうしわけありません……。

でも、待ってくださる方がいらっしゃると、頑張って更新に励みたいと思います。
このお話も、近々更新できるようしますね^^
宜しくおねがいします!! ツンデレよりでした。

2016/06/14 (Tue) 08:36 | REPLY |   

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