Sweet selfishness ~甘い我侭~ act 57

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ミツバの左手の薬指には、控えめな光が輝いている。

それは、あの日の夜、土方の手によってはめられたものだった。

 

プロポーズのあの日から、土方の何かが変わったかと聞かれても、多分きっと答えられないだろう。

朝起きて、新聞に目を通し、規則正しく出勤、近藤を目にしてあいさつを交わし、高杉を見つけてから軽く挨拶、そして沖田からの挑発にまんまと引っかかり、血圧を上げてからデスクに腰を下ろす。


そんな何げない日常。


「はい、十四郎さん」

ミツバのカバンから出されたのは、ミツバが今日の朝、早起きしてから作ったお弁当。

冷凍食品をひとつも使っていないのは見れば分かる、口に入れると、いつも食べているミツバの味付けが口の中で広がった。

神楽だったならば、待ちきれなくて味の感想を求めるだろうし、また子だったら、子犬の様に、いまかいまかと高杉からの言葉を待って、お妙だったら、何ひとつ反論は許さないという顔でにっこりと微笑むだろう。

そんな事を頭に思い浮かべながら、土方は、伺うようにミツバの顔を見た。


「旨い」

たった一言、土方の口から出たことばを聞くと、控えめだけれど嬉しそうに笑った。

それが何故か照れくさく感じた土方は、黙々と口を動かした。


「午後からの予定は?」

何気なく口から出た言葉にミツバの返答は少々ためらっている様な間があった。

「検診が……」

特に特別な事ではない、今までだって検診は何度も行っているはずだった。

「何かあったのか?」

ミツバの様子に、土方の声は一瞬で深刻なものになった。


「神楽ちゃん」

事務所から近いところにあるコンビニに神楽を見つけたのはお妙だった。

「あ、姉御……と、ゴリ」

昼食を終えたお妙達と、たまたま合流した神楽は、事務所まで一緒にいく事になり車に乗り込んだ。

本当は沖田と一緒に昼食を取るはずだったけれど、取引先から連絡が入ったために神楽との約束はキャ ンセルになった。

「ミツバちゃん知らない?」

てっきり二人でいると思っていたのか、お妙は不思議そうに首をかしげている。

「ミツバ姉は、検診に行ったアル」

「あら、そうなの?」

この後の予定に、組み込まれていたのか、お妙は残念そうな表情をしたけれど、検診はお腹の中の赤ちゃんが育っている過程をしる大事な日でもあるので、納得したように頷いた。

「今日はとっても楽しみな日アル」

コンビニで買ったおにぎりの封をあけると当然のように口の中にいれた。

「楽しみな日?」

そんな日あったかしら? そうお妙は首を傾げた。


病院の待合室には、ミツバと同じような大きなお腹をさせた妊婦と、今日の日を待ちわびたであろう夫の姿がチラホラと見える。その列の中に、ミツバが居た。そしてその隣には土方が座っている。


腕を組み、この空間が若干耐えられないのか、視線だけを先ほどからキョロキョロとさせている。


「沖田さん」

診察室の方から、看護師の声が聞こえた。

「はい」

ミツバは控えめに返事すると、ソファから立つ。

そして、土方の方を伺うように見た。


ベットの上に横たわるミツバの上に、トロリとジェルが落ちる。それをお腹全体に伸ばすとひんやりとした感触が触れた。

お腹の上ですべるように動いていると、エコー画面に大きくなった胎児の姿が映し出される。

「ここが顔ですね」

ここが足、ここが手……。先生の手と同時に出される言葉は、側に座っている土方にちゃんと聞こえている。

前回の検診のとき、次の検診で性別が分かると言われていたミツバ。

産まれてきてからの楽しみにしたいと思いながらも、早く性別が分かれば、その子に合わせて色々買う楽しみも増えると、知ることを迷っていたミツバ。


「どうしますか?」

先生の言葉は、知るか、知らないでおくかと聞いている。


ミツバは、土方の方に視線を送る。

「お願いします」

それに応えるように口を開いたのは土方だった。


土方の中で初めての感情が、この状況にどう対応していいのか分からないでいる。

昼食中、検診があると言ったミツバが、このことを土方に言おうか言うまいかと悩んでいたと知り、一緒に病院まで来たはいいけれど、エコー画面に映し出された胎児は、土方の予想を大きく裏切るようにしっかりと映し出されていた。

目の前にある丸く大きく膨らんだお腹は、見た目からすると何の姿形も見えないでいるのに、スコープから出された映像は、確かにそこに存在を示していた。


医者は、もう一度土方とミツバを交互に見た。

「女の子ですね」

わっとミツバの顔が輝いた。

「女の子」

口にして、それが確かだと医者に確認しては、もう一度喜ぶそぶりを見せる。


(女の子……)

聞いてもまだ全然実感が沸かないけれど、確かにミツバと医者は女の子と言った。

性別を聞いたら、これまで漠然としなかったものが急に現実的に見えてきた。


会計を済まし病院を出たところで、土方の携帯がなった。

「悪い」

取引先からだと、すぐに分かったミツバは、少し歩いたところにあるベンチに腰を下ろすことにした。

外は、寒いけれど、さっき聞いた先生からの言葉は今もまだミツバの心の中をあたたかくさせている。


(女の子か)

気持ちは半分半分だった。土方に似た男の子が欲しいと思う反面、やっぱり一人目は可愛らしい女の子が欲しいと思っていた自分もいる。

けれどあの先生の言葉を聞いたとき、やっぱり女の子が欲しかったのだと思った。


お腹をゆっくりと撫でるミツバに、遠くの方から子供の声が聞こえた。

それは混雑する駐車場の真ん中辺り。ミツバが腰をあげてそちらの方に行って見ると、幼い子供が親を恋しがるように泣いている姿が目に入った。


通話を終了させた土方が歩きながらベンチに近づく、歩いていける距離で一番近いベンチに絶対座っているだろうと思いがあったのに、そこにはミツバの姿はなかった。


何処に行ったんだろう? 初めはそんな些細な気持ちだった……。



・・・・To Be Continued・・・・・










Category: ★゚・*:.Sweet selfishness ~甘い我侭~.:*・゚
Published on: Sat,  17 2016 21:04
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