Sweet selfishness ~甘い我侭~ act 58

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  続きを読まれる方は ぜひ、コチラからどうぞ ↓↓↓↓↓↓↓↓ ミツバの手を必死に掴んでいるのは、二歳ほどの女の子だった。

いつから泣いていたのか、柔らかいほっぺたは、ぷっくりと泣き腫れている。

広い駐車場の中で、はぐれてしまった親を探すために、女の子の手を引く。時折、お母さんは何処? と聞くと、あっち、こっちと指を指しながら、ミツバをひっぱって歩く。


本当ならば抱っこしてあげたいと思うけれど、大きなお腹ではそうもいかず、ミツバは言われるがままに、女の子の後をついて歩いていた。


その頃、土方は、いなくなったミツバを探していた。

持っていた携帯を鳴らしながら車に戻ってみると、落ちているミツバの携帯を見つけた。神楽ならともかく、あのミツバが唐突もない行動をするとは思えない。自分を心配させるような事をするはずがないと思った瞬間、先日ミツバが行ったあの言葉を思い出した。


私がいなくなったら、探してくれる?


感情が一瞬でざわめいた。

あの食事中の何げない一言。そんな事しないだろうと気にもせずにいた言葉が、胸の中でぐるぐると回りだした。

急に心臓が早くなった音に焦りながら、土方はもう一度回りを見渡した。

「ミツバ!!」

叫んだ声が、そこらへんに響いた。けれどミツバの姿は現れそうになかった。

「マジかよ……」

冷や汗が、顔をつたう。あんな体で、遠くにいけるはずもないのに見つからないことに焦りはつのった。周りを見渡して、居ない事を確認すると、土方の足は、病院の中へと入っていった。


「ママ、いない」

いつのまにか、病院の裏庭に来ていたミツバは、ベンチに腰を下ろしていた。

その間も、手はしっかりと握られていて離れそうにない。

ミツバは、女の子の頭を撫でながら、土方に連絡を取ろうとカバンの中を探った。そして携帯がない事に気づいた。

(困ったわ……)

きっと土方が心配しているに違いない。

でも、早くこの娘の親を見つけてあげたい、とはいえ、いつもの様にすんなりと動けるからだではないので、対応に困りながら、女の子に話しかけた。

「もしかしたら、病院の中で探しているかもしれないから、一緒に行ってみましょうか?」

駐車場に居ないなら、今頃院内の中で探しているだろうし、中に入れば、電話をかける事も可能だ。

そう言いながら、ミツバは立ち上がった。


すると、ほんの少し、お腹が痛むのを感じたミツバ。

その表情に気づいたのか、女の子はミツバを心配そうに見つめる。

「大丈夫?」

「うん、大丈夫、行きましょう。お母さんの所に」

ミツバの言葉に、女の子は大きく頷いた。


二人が病院の裏口から入ったところで、向こう側から、名前を叫びながら走ってくる女性が目にみえた。

「ママっ!!」

ミツバの隣で、応えるように叫んだあと、あれほどギュッと握り締められていたミツバの手からするりと抜けた。

わが子を抱きしめる姿を見ると、やっと重荷が降りたように、ミツバは安堵の笑みがもれた。


振り返った女の子がミツバに大きく手を振る。それに気づいた両親がミツバに向かってふかぶかと頭を下げた。去っていく二つの影を見送るミツバ。




「ミツバっ!!!」

その影と立ち代るように響いた声が、背後からかけられた。

こんな季節だというのに、息を切らしながらミツバの前に現れた土方の全身は汗に濡れていた。

「と、十四郎さん」

早く土方に電話をしなければいけないと思っていたけれど、まさかこんなにも焦った土方と出会うなんて予想にもしなかったミツバはただ驚いている。

「おまっ…………っっ」

今にも怒鳴りあげるかと思わんばかりの声を、土方はこらえるように言葉をきった。

さすがのミツバの顔を一瞬ひきつりを見せた。

けれど、土方は長い息をついた。

「焦らすんじゃねえよ」

土方のその表情を形として現すように、あご筋に汗がつたった。

そしてミツバを腕の中にぎゅっと抱きしめると、その存在を確認するように力をこめた。

その声は、怒りや悲しみではなく、懇願にも近いように吐き出された。

抱きしめられたその体から、土方の火照った体温と、激しく動機する脈が伝わってくる。


子供が泣いていたら、誰だって気がかりで足をむけてしまうけれど、そこに居たのが女の子だと分かり、産まれてくる娘と重なった気がした。

小さな手を掴むと、自分より温かい体温が、必死と掴んできた。

小さな歩幅で歩くのを見ていると、これから訪れるであろう自分達の未来の姿

を見た気がした。


離そうとしない腕の力。

汗ばんだシャツをきゅっと握り締める。

「ごめんなさい……」

腕の中で冷めていく体温と、落ち着きを取り戻す脈を、静かに聴きながら、そっとミツバは土方に謝った。


車のエンジンをかけて、病院をあとにする二人。


さっきの事もあってか、車内はシンと音を立てないでいる。


運転をしている土方の横顔をチラリと視界のすみにいれるミツバ。

その表情をみると、土方の感情が手にとるように分かった。

咄嗟に子供を見つけてしまったとは言え、考えれば軽はずみな行動だったと今更ながらに感じた。

少しまてば、土方がきただろうし、待たなくても、もとの場所に引き返すくらいの事はできたはずだ。

思えば思うほどに、土方に声をかける勇気がなくなっていくような気がした。


「ホラよ」

そんな空気を切ったのは土方の声だった。

差し出された左手の中には、ミツバの携帯が握られている。

そういえば、携帯さえもなくしていたんだと思いだし、手の中から携帯をそっととりあげたミツバの表情は浮かない。


「ごめんなさい」

いえる事と言えば、こんな言葉くらいなもんだ。その言葉さえ、土方の感情を逆なでするんじゃないかと思えてくる。


そんな空気に耐え切れなくて、ミツバはジッと窓の外にある風景に視線をやった。


2㌔ほど走ったところにある小さな街パーキング。

別に用事はないはずなのに、土方の車は止まった。止まってしまったら、降りなければならないので、ミツバは車から降りると、さっきまで重たかった空気が、一気に入れ替わるように、体に入っていく思いがした。


「ミツバ」

先を歩いていた土方。ミツバは視線をあげると、ふと目についた。

差し出されたのは、掌。それを掴めと言っていっているのは、口に出されなくても分かった。

ミツバの手よりずっと大きいその掌が、差し出された、ただそれだけの事なのに、掴まれ包まれた瞬間、胸に何かが、キュンと弾けた気がした。


「全く……、油断ならねえのは、アイツらだけだと思ってたのに……」


憎まれ口を叩いているのは、誰の事だと想像が出来たと同時、そんな土方の手は、もう怒ってないと伝えたがっているようにも感じた。


ふっと心が軽くなったミツバは、ふわりといつもの柔らかい笑みをみせた。


「ねえ、十四郎さん、ほら、花がとても綺麗だわ」



・・・・To Be Continued・・・・・
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Published on: Tue,  18 2016 10:39
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