彼氏 卒業編 9

画像11


読者の皆様
いつも読んでくださってありがとうございます☆

続きを読まれる方は
ぜひ、コチラからどうぞ
↓↓↓↓↓↓↓↓ 手に持っている紙袋が、神楽の手に、ずっしりと重さの感触を感じさせる。
少し前を歩く沖田の背中を見ながら、神楽は無言で歩いていた。

(……しまったアル)
絶対、沖田は気づいてしまったのだ。
何をどう言っても、いい訳にしかならないけれど、このまま無言を通しても、きっと気まずい状況が悪化するだけだ。そう思ってみては、さっきから口を開いては、その言葉を吐き出せずに飲み込んでしまう。

思わず零れた神楽の感情はため息として、表に現れる。
うつむきがちな視線には、いつのまにか、沖田の靴が映りこんでいた。
ハッとした神楽は、思わず顔を上げる。すると、斜め上に、沖田の顔があり、息を呑んだ。

「何だよ」
「な、何でも……」
ない事はないけれど……。

「ただ……」
高校を卒業してから、環境が変わって、当たり前に会えていた時間があっと言う間に取り上げられてしまった。何気ない毎日を過ごしているなかで、沖田との時間はすれ違ったまま流れて行く。
たまに会うことができて、近況を聞いても、上面だけ知らされる。
街であえば、会った事もない女が、当たり前の様に沖田の名前を呼ぶ。

「別に……」
だから、自分の知らない沖田を少しでも知りたかった。
毎日通る門をくぐって、勉強をする沖田の姿をすこしでも垣間見れたらと思った。

喧嘩したいわけじゃないけれど、子供じみた感情を沖田には知られたくない。
そう思うと、息をすいこんでは、無言だけが吐き出された。

そんな神楽の頬が、沖田の手によって、ふにっと形をかえた。
「……いひゃいアル」
見上げる沖田の顔は、にくたらしく笑っている。
「ぶっさいくな面してんな」
そんな沖田の言葉を聞いた神楽の顔は、ますますぶさいくな表情をさせた。それがツボに入ったのか、沖田は、声を出して笑いだした。
さっきまでの空気は一変、やわらかい空気が神楽の気持ちを楽にさせた。
シリアスな状況になっても、こんな風に和ませてしまうのは、沖田の得意技だ。神楽には到底できない技だ。だからいつだって救われていると言うか、沖田にかなわないと思い知らされる。


「神楽」
笑っていたと思った沖田が急に呼ぶ。振り向いた神楽にふわりと唇を重ねた。
唐突な出来事に、フリーズした神楽の表情を楽しそうに見ては、沖田は口を開いた。
「ほら、行くぞ」
淡く火照った神楽の表情が見えているかのように、その手を引く沖田の背中は楽しそうだった。



本人は知ってか知らずかは分からないけれど、沖田に手を引かれる中、大学の中で大量に売りさばかれている写真を今更ながら思いだした。あの中に自分の知らない写真が沢山あって、おもわず手に取ってしまった。
高校からの延長線の様なその光景は、懐かしくもあって、うらやましくもあった。

今隣を歩いているだけじゃ、足りないなんて思う自分は我侭なんだろうか?

そんな事を思う神楽の携帯が、ポケットの中からコール音を鳴らす。

中から取り出した神楽は、表示名を見たあと、電話に出た。
「もしもし」
歩く足をとめた神楽は、会話を続けている。
丁寧な言葉で話すその状況から察して、どうやら、バイト先じゃないかと沖田は嫌な予感がした。
そして、通話を終了させた神楽から、予感的中の言葉が出された。
「ごめん、急にバイトが入ってしまったアル」
やっぱりと思ったけれど、ここで行かせないわけにはいかないのは分かっている。
残念がっているのは、神楽も同じだ。その顔を見れば分かる。
「分かった、バイト先まで送りまさァ」
「うん」
コンビニに着くその短い道のりの中の時間。
「バイト、何時までなんでィ」
「う~ん、分からないアル」
急の変更で、神楽の返事を聞いたらすぐに通話をきってしまったという。
向こうに着けば、それくらい分かるだろうと、バイト先のコンビニまで二人は向かった。

コンビニの中に神楽が入っていく後ろ姿を沖田は見送る。
すると、その視界に、先日会った間宮の姿が入った。
(あいつ)

何ひとつとして知らないけれど、沖田はこの男が気にくわない。
コンビニのエプロンをした神楽と、仲よさそうに話しているその姿をみると、その顔は、更に機嫌が悪くなるのが分かった。

「沖田」
コンビニの中から、神楽が出てくる。
「夜の10時に終わるアル」
仕事についたら、グダグダと後を引かない神楽は、それだけ言うと、沖田に手を降り店内の中へと戻っていった。

しばらく二人の様子をみていると、ふいに間宮と視線がかち合った。
まるで沖田の心情が分かっているとでも言うように、にっこりと笑うと、ペコりと頭を下げた。
この余裕のある様までもが、あの元担任の顔を思い出す。

けれど常識ある態度にそれ以上沖田はその場にいる事も出来ず、神楽が終わるまでどこで時間を潰そうかとの考えに切り替えた。




・・・・To Be Continued・・・・・
Category: 彼氏 卒業編
Published on: Sun,  18 2016 16:18
  • Comment: 0
  • Trackback: 0

0 Comments

Post a comment