彼氏 卒業編 13

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イラスト/ 菌うさぎ

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こんな所まできてしまった神楽だけれど、分かった事もあった。
それは、沖田の隣を歩く、桜井沙良の表情をみれば、すぐに分かった。
この娘は沖田の事が好きなんだろうと。

(だから帰りたくないアル……)
沖田の事は信じているけれど、あんな表情を見てしまったら、帰れるわけがない。

コンビニで買った肉まんをほうばりながら、神楽は、ただ時間が過ぎるのを待つ。
携帯の充電は、おそらく数パーセントだろう。むやみに携帯に触ることもできずに、神楽はこの後、どうしようかと考えている。
(とてもじゃないけど、あんなホテルに泊まれないアル)
財布の中身は自分が一番良く知っている。
だから神楽の口からため息が漏れた。

(かと言って、いまさら帰れないネ)
時間が経過していくに連れ、どんどんと気温も下がっていく。
空は、夕暮れになり、冬は、陽がおちていくのもあっと言う間だ。

どのくらい待っただろう。寒いなか、神楽が待ち続けると、やっと講義が終わったのか、人がぞろぞろと出てきた。

沖田が居ることも、宿泊するホテルも分かっているだけに、来たときほど慌てることはないけれど、それでもやっと出てきた沖田を神楽の視線は探している。
見つけると、ゆっくりと神楽が、二人の後をあるく。
長い間、外に居て、手の感覚もなくなってきた。沖田達が、ホテルに入ると、そっと神楽も入って、さっき座ったソファに腰をおろした。悴んだ手が、ホテルの中の温もりに包まれる。

ほっとしたのか、神楽は、うとうととしてしまい、頭を振る。

沖田がエレベーターに乗るのを確認する。
このまま、もう帰ってしまおうか……。
けれど、寒さのせいか、ずっと気を張っていたせいか、神楽は、ソファの中で、うとうととしてしまい、そのまま意識を手放した。


「――さま。お客様」

寝入ってしまった神楽の体を、やさしく客室係の女性が起こしていた。
(やばっ、寝ちゃってたアル)
「ご、ごめんなさい」
辺りは、すっかり暗くなっていた。

「あの……このホテルに沖田総悟さんは宿泊してるアルカ?」
寝ちゃったすきに、帰ってしまった事はないだろうけど、確認のつもりで聞くと、客室係は、フロントに行き確認してくれた。
「はい、宿泊しております」
それだけ聞けば十分だ。
神楽は、礼を言うと、ホテルから出た。

(どうしよう、右も左も分からないアル)
昼間見ていた景色が、夜になって細かいところまで見えない。
くるのに、あれだけ迷いながら来た道を、すんなりと帰れる気がしなかった。

もう一度、お財布の中を確認する。

(どこかに、安いホテルはないアルカ……)
こんな高いホテルじゃなくても、この近くにある安いホテルなら探せそうだ。
そう思いながら、神楽は歩きだした。

見渡す限り、背の高いホテルがあるけれど、少し路地を入ったところに、ホテルの並びがあるのを見つけた。
「ホテルはホテルでも……」
ラブホテル街。でも、きっと沖田が宿泊しているホテルよりかは安い気がする。安くて寝られるなら、何処でもいいと、神楽は料金を拝見しながら、歩き、そして見つけた。
「ここなら、安いアル」
女一人で入ることなんて、きっと一生に一度きりだ。そんな事を思いながら、入ろうとすると、すぐ後ろから声をかけられた。

「何? こんな場所にもしかして一人で入るの?」
驚き振り返ると、一人の男が立っていた。
「べ、別に一人じゃないアル」
そう強がって見せるけれど、神楽の周りには誰も居なかった。
恐くなった神楽は、男を追い越して、走りにげようとした。

すると、目の前の何かに鼻をぶつけた。咄嗟に離れようとする体をそのまま強く引かれた。

「こいつに、何か用ですかィ」
頭上から聞こえてきた声に、見上げ、思わず声をあげそうになって、その手で塞いだ。
(沖田っっ!!)
突然現れた男に、神楽に絡んできた男は口からいい訳をペラペラと話しはじめた。
「な、何って、このお嬢ちゃんが、一人でここに――」
途中まで話していた男が、沖田の顔を見ると、ゴクリと喉を鳴らしたのが分かった。
「べ、別に俺ァ何も……」
その足は既に後退している。過ぎ去りぎわに、台詞をはいていきながら、男は急ぎ足で、その場を走り去っていってしまった。

男の影も見えなくなった頃、シンとした空気の中、冷めた沖田の声が響いた。
「何でオメーがこんな場所にいるんでィ」
「か、観光……て、のは嘘アル……」
いい訳も何も頭に浮かんでこない神楽は、思いついた言葉を出し、それを終わらせる。この沖田に冗談は通用しない。
「行くぜ」
沖田の声色は、まだ苛立ちを濁らせている。が、神楽の手をしっかりと握り締めると、歩きだした。
前を歩く沖田は、とてもじゃないけれど話かけれる状態じゃない。一刻もはやくこの場所から抜け出させたいのか、沖田の足は、いつもよりずっと速かった。
ホテル街から抜けると、沖田が宿泊しているホテルにと戻ってきた。
「あ、あの……」
「なんでィ、これ以上まだ何かいう気かィ」
「や、別に何もないアル」
反論は許さないという沖田の視線に、逆らわず神楽は着いていき、エレベーターに乗り込んだ。

「――な、何で知ってるアル」
どうしてここに来ている事を知っているだろう、もしかして、尾行していたのをバレたのか……?
神楽の言葉に、しばらく黙っていた沖田だったが、ゆっくりと口を開いた。
「フロントの人が、教えてくれたんでさァ」
しまったと思ったけれど、今更遅い。確かに沖田の名前を出してしまったら、何かの節に、教えてしまうだろう。
「そうアルカ」
だったら、気がついたのはさっきだったんだと思うと同時、もし沖田が気づいてくれなかった時の事を考えるとゾッとした。

エレベーターから降りると、長い廊下を歩く。そして205号室の前で止まると、沖田は部屋のカードキーを取り出し扉を開けた。

「あ、あの……」
「なんでさァ」
「は、入ってもいいアルカ」
「何を今更、この部屋意外に行く場所なんかねえだろィ」
そう言うと、背中を見せさっさと中に入っていく沖田。その後を着いていくように神楽はゆっくりと部屋の中に入った。

何がなんでも、今日は自分が悪い。それは分かっていた。
ミツバに聞いても、大学に聞いても、確かに講義だと言っていた。そして沖田は確かに講義に来ていた。
他に二人が行った場所は、あのレストランとこのホテル。それは見てきた自分が一番良くわかってる。
尾行したあげく、あんな場所で見つかってしまって、これで怒るなと言うほうが無理だ。

「ご、ごめんなさいアル」
沖田に向けて、しっかり頭を下げて謝る神楽。
何も返ってこない沈黙が、重たい。

「そんなに俺が信じられねえか」
沖田の声は、苛立ちを現している。日頃から大切にしている沖田にとって、こんな状態、嬉しくあるはずがない。
「そんなんじゃない……」
こうだからこうだ、なんて単純な感情で現せれない。
(だってあの娘は――)
沖田の事が好きなんだ。そんな事いえるはずない。

「どうして……言ってくれなかったアル」
たった一言でいい、それだけで、良かった。
下を向く神楽の顔を、くいっと沖田があげた。目には涙が溜まっていた。
「言ったところで、オメーが納得できるはずがねえって知ってるからでィ」
とうとう、神楽の涙が頬から、こぼれた。
沖田の言葉があまりにも的を得ていたからだ。

沖田の口から、話を聞いた所で、結局不安で来てしまったかもしれない。でもそれは同時に、やっぱり沖田の事が信じられないといってるも同じだ。

沖田は、神楽から離れるように、椅子に座った。

神楽の性格を知り尽くしている沖田だからこそ、今日の事を言わずにいた。
何もないと言ったところで、結局こうなってしまう事が予想できたからだ。
部屋から出て下に降りたとき、フロント係りの女に呼び止められた時、耳を疑った。

ついさっき、ホテルを出たとき聞いたとき、無我夢中で飛び出した。
ホテルを出たところで、神楽の財布の中の内情なんて知り尽くしてる。
だから神楽が考えそうな所は、走って探し回った。
走ってる間、頭の中では、あの時の様な嫌な予感がぐるぐると回っては追い討ちをかけた。

あのホテル街で、聞き覚えのある口調を聞いたとき、そして神楽の姿を確認したとき、目の前がカッと赤く染まった気がした。
神楽が反省しているのも知ってる。こんなにも知り尽くしているはずなのに、いつだって思いどうりにならない神楽に時折腹がたってしまう。

そんな沖田の様子を見ていた神楽は、ゆっくりと、沖田に背をむけた。
(ここには、居られないアル)
やっぱり、沖田がエレベーターに乗ったあの時、ちゃんと帰ればよかった。そしたら、見つかる事もなかったはず。
何も変わらず、沖田を待っていられたかもしれないのに……。

こんな状態で沖田といられるわけがない。
神楽は、そっと歩きだすと、ドアノブに手をかけた。けれどそれが、下がる事はなかった。神楽の手の上に、沖田の手が重なっていた。

・・・To Be Continued・・・・・
Category: 彼氏 卒業編
Published on: Sat,  18 2017 09:00
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