彼氏 卒業編 18

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イラスト 菌うさぎ



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↓↓↓↓↓↓↓↓ 車の窓ガラスから雨が降る光景を見ながら、また子はため息をついていた。
今日の天気は曇り。だから雨なんて降らないと思っていたし、もし降っても走って帰ればいいだろうとまた子は思っていた。
「最近の天気予報はあてにならないッスねえ」
曇ったガラスの向こう側では、土砂降りの雨がコンクリートを打ちつけている
また子の手の中には、高杉の事務所から預かっていた書類ケースがあった。
「おい、このままあいつの事務所に帰りゃいいのか?」
ハンドルを握る土方は、また子にそう声をかけた。
「あっ、コンビニに行って欲しいッス」
帰ってくる時に、コンビニでタバコを買って来いと言われていたのを思い出したまた子。
土方の車は、言われたとおりにコンビニと入る。
車の中で、また子を待とうかと思っていた様だったが、そう言えば、胸ポケットのタバコが切れそうだと思い車から出る事にした。

高杉のタバコのついでに、何か甘いものでも食べようかと物色しているまた子の側で、土方がレジの店員にタバコの銘柄を告げる。
その後に続くようにまた子が並んだ。

買い物を済ました二人は、コンビニの自動ドアを開けると、雨の中傘をさし歩いてくる人の足並みを見つけた。
「あれ……沖田さんじゃないスか?」
足並みの中で、見覚えのある傘を見つけたのだ。
その声に反応する土方は、傘の合間からちらほらと確認出来る沖田の顔を見つけた。

「何してんですかィ、こんな所で」
沖田は以外な組み合わせに、声をかける。
「そりゃ、こっちの台詞だ」
沖田のほかにも、同じような男女が次々にコンビニの中に入っていく。
「腹が減ったんで買い物に来ただけでさァ」
沖田が土方と話している合間、また子はコンビ二の中に入っていった女子達の姿を眼で追っていた。
あの日、神楽が言っていた女子が、この中にいると本能的に何か感じたらしい。
すると、土方もコンビニの中からしきりに沖田の方にと視線をやる女子の姿を見つけていた。

「あいつは?」
「さあな、この時間だったらバイトだろう?」
神楽の行動なら、沖田の方が知っているはずだ。ましてや、神楽は近藤の事務所には滅多に来ない。
そんなたわいもない話をしていると、また子が沖田に物申すとばかりに口を開いた。
「沖田さん!神楽ちゃんにしん――むぐ」
「ほら、帰るぜ」
「むごごむご……」
また子が何を言い出すか分からんと思ったのか、土方はまた子の口を塞ぎ、傘を手に取った。
(何するんスかっ!一言沖田さんに言ってやるッス)
そんな風に、また子は土方の掌の中でふごふごと声を出しているが沖田には届かない。

車に乗る直前にやっと土方の掌から解放されたまた子は、そのまま今度は土方にと声をあげた。
「何で止めるんスかっ」
「オメーがしゃしゃり出ると余計やっかいな事になるからだ」
そんな事ないっ!そう口にだそうとしたけれど、あながち間違っていないもんだからしぶしぶ大人しくなるまた子。
また子にそうは言ったものの、土方も実際気になっては居た。
あの時の神楽の様子からしてみると、隠せてはないけれどそうとう腹に溜め込んでいる様子なのは分かった。
かと言って、沖田が他の女に眼中がない事は分かる。
だから言ったところで、余計なお世話になる事は目に見えていた。

また子は、やっぱり一言、言いたかったとばかりに、窓の外を見ている。
そんな様子を見ながら土方は、タバコに火をつけた。

――夕方。バイト帰りの神楽の携帯が鳴った。
手馴れた様子で、カバンから携帯を取り出す神楽。
「今どこでィ」
「今?バイト終わりで帰るところアル。お前は?」
「あと一時間ほどしたら俺も帰るけど、帰りにそっちに行きまさァ」
「えっ!うちに来るアルか?」
まさか沖田が来るだなんて思ってなかった神楽は、驚きのあまり声をあげる。
「まるで俺が行っちゃまずいとでも言いたげでさァ」
「ち、違うアルっ、ただ分かってたら掃除くらいしてたのに……買い物だって……」
特に神楽の部屋が汚れていると言う印象を持った事はない。
あって、雑誌の一冊、二冊が床に転がっているくらいだ。
「別に気にしねえよ」
「お前が気にしなくても、私が気にするアル」
神楽はそう言うと、沖田がくるまでの時間で何が出来るかぶつぶつと考えているそぶりを見せはじめた。
「私は、早く帰るから、お前はゆっくりと来るアル!」
そういい告げると神楽はぶつっと電話を切ってしまった。
電話の向こう側の様子が手にとるように分かったのか、沖田は笑っている。
「へいへい。ゆっくりね」

自宅にと戻った神楽は、目に当たる物をしまうべき所にしまい、今朝の洗い物をささっと終わらしたあと冷蔵庫を開けた。
「多分、まだご飯食べてないはずアル」
冷蔵庫の中から、適当に食材をとると台所にと置いた。

沖田の宣言通り、一時間後、来たことを知らせるチャイムが鳴った。
「開いてるアルヨ~」
中から神楽が沖田に向かってそう軽く叫ぶと、沖田が入ってくるなり不満そうに口を開いた。
「開いてるじゃねえ。鍵はちゃんと閉めろっていつも言ってるだろィ」
「いつもは、ちゃんと閉めてるアル」
今日は、自分が来ることが分かっているから開けといたんだと言う神楽なりの正論を聞いたところであまり信憑性がないと思いながらも沖田は部屋の中に腰を落ち着けた。

沖田が寛いでいると、神楽はおぼんに親子丼を二つ乗せて運んできた。
「来るなら来るって、もっと早くに言ってくれたらマシなもの作れたネ」
神楽は親子丼が不満なようだが、沖田からしてみれば何の不満もない様に箸を手にとった。

沖田の部屋に行く事はあるものの、あまり沖田が部屋に来ることはない。
だからまるで抜き打ち検査にでも引っかかってしまったような気持ちになった神楽は、もう少しちゃんと日頃から掃除をしとけば良かったと思っていた。

食事を終えた二人。神楽は食器を下げると洗い物をしはじめた。
「神楽」
すると居間にいる沖田が呼んだ。
「ちょっと待つアル、洗い物してるネ」
けれど、沖田はそんなの関係なとばかりにもう一度神楽の名前を呼んだ。
何か話でもあるんだろうかと思った神楽は、洗い物の手を止め、沖田の方へと足を向けた。
「何ネ」
「いいから、ここに座ってくだせェ」
神楽は、沖田の言われたとおりにそのまま腰を下ろした。
すると沖田は神楽の膝に頭を乗せたまま、テレビを見だした。
「コラ。今私が何してたか知ってるアル」
「ああ、膝枕してる」
沖田の言葉に、呆れて返す言葉もない。そのまま立ち上がろうと思ったけれど沖田の頭がそうはさせてくれない。

ただ寛ぎながら、テレビを見てる。それだけなのに幸せだなんて思ったら、きっとすぐにこいつにバレてしまう。
そう思った神楽は、沖田の一緒にテレビをただ見続けた。

「明日は、朝早いアルか?」
「ん?ああ。早い」
最近沖田はレポートやら論文で忙しい。
神楽は、ちらりと時計を見てしまった。
(もうすぐ、帰らなきゃいけないアル)
沖田が忙しい身だということは、十分知っている。我侭も言う気はなかった。

「泊まってほしい……」
「えっ?」
「――って、顔してやすぜ」
頭の中を見透かされてしまい、神楽はわっと動揺を見せた。
「なっ、思ってないアルっ、そ、そんな事――っ」
「ほんとうに?」
いつの間にか沖田は起き上がりイタズラを仕掛けるような視線を神楽に向けていた。
答えを知っているくせに、あえて分からないそぶりを見せ、聞きたいとばかりに誘導する口ぶりにかなわなくて、唇を噛んだ。

すると、沖田は強情なのは百も承知とばかりに声を出した。
「だったら、この口に聞きまさァ」
そう、神楽の唇に甘く噛み付いた。

そんな沖田の様子にほんの一瞬抵抗を見せるけれど、あっさり落ちてしまった様に口を開いた。
沖田の舌はあっと言う間に神楽の熱を絡め奪っていく。
「……んっ」
そのまま後ろに倒されていると思ったら、背は床についていた。

流されてもいい、神楽がそう思った瞬間だった。
沖田の携帯がコールを鳴らした。
けれど沖田は気にするなとでも言うように、その手をやめようとはしない。
けれど携帯のコールは沖田が取ってくれるのをひたすら待っている様に、なり続けた。

「―――携帯、鳴ってるネ」
神楽から、そう言われ沖田は仕方なく身体を離し携帯を手に取った。

最近よくかかってくる電話。相手は誰か分かってる。
大学の中でのことなんて分からない。なにか沖田との間に共通点があって、二人一緒によくいるのだろうって事も分かるし、だから連絡先を交換しているんだろうって事も。

「どうしたアル」
携帯を切った沖田は、どうしようか悩んでいる様だった。
「いや、論文の事でちょっと。明日で大丈夫でさァ」
「ほんとうに?」
「……ああ」
一瞬、間が会ったのを神楽は見逃さなかった。
「大丈夫じゃないアル。大学の事はちゃんとしなきゃ駄目アル」
「悪いな」
神楽の頭をくしゃくしゃとさせると、沖田は名残惜しそうに頬にキスを残した。
「明日また連絡しまさァ」
沖田の言葉に、うんと頷いた。
さっきまで、甘かった雰囲気がシンとした空気の中に香りだけを残した。

沖田には、沖田の世界がある……。
胸の中で呪文の様に言い聞かした。

「――痛いヨ」


・・・To Be Continued・・・・・



Category: 彼氏 卒業編
Published on: Tue,  25 2017 21:58
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