彼氏 卒業編 19

271.jpg
イラスト/ 菌うさぎ

読者の皆様
いつも読んでくださってありがとうございます☆

続きを読まれる方は
ぜひ、コチラからどうぞ
↓↓↓↓↓↓↓↓ 翌日の朝、神楽の枕もとにある時計の針が8時半になる所で、携帯がなった。
昨夜沖田が帰ってからしばらく胃痛に悩まされた神楽は、就寝したのが遅かったのだ。
だから携帯の着信音に気づかないまま眠っているかと思ったけれど、ゆっくりと手を伸ばすと携帯を手に取った。
「――もしもし?」
くぐもった声が相手に伝わったらしい。まだ寝ぼけていて誰かさえもよく分かっていないようだったけれど、話しているうちに段々目が覚めてきたようだった。
「沖田の大学?」
「そうなの。総ちゃんから連絡があってね、家の机の引き出しにあるA4サイズの封筒を中身ごと持ってきて欲しいって言われたんだけど、今日は実習の日で間に合いそうにないの。神楽ちゃんの今日の予定はどうかしらと思って連絡したんだけど」
もし神楽が駄目なら、土方でも近藤でも連絡のあてはあるとミツバは言っている。
けれど今日は神楽もバイトが休みで予定は空いていたのだ。
(沖田の大学か……)
一瞬神楽は考えたけれど、ミツバの頼みを断る気にはならなかったので、すぐにOKを出した。

沖田の家に入ると、言われた通りに机の中の引き出しの中にある封筒を見つけた。
それを持って、一応ミツバに連絡をいれるとそのまま大学にと向かう事にした。

今日は、沖田を様子を伺うのじゃなくて、本人に会わなきゃいけないので、神楽は大学の中に入ると沖田の教室を探しあるいた。
すると比較的早くに沖田の姿を見つける事が出来た。
本を目隠し代わりにして、椅子に寝そべって寝ているのは間違いなく沖田だった。

その様子を見た神楽は高校の時の事を思い出した。
ろくに授業も聞かないで、アイマスクしたままよく寝ていた姿。制服は来ていないけれど、そこにはあの沖田が居た。

神楽はそっと近づくと沖田のすぐ側に立った。
こんな姿を見ると懐かしくて仕方がなかった。神楽にとってはもう過ぎた過去で二度と戻らない光景が今、日常としてここにある。それがなんだか切なかった。
神楽は沖田にそっと触れようとし、ピタリと止めた。
(起こしてもいいのか分からないアル)
昨日、沖田はあれから何時までやっていたのかも、いつ帰ったのかも知らない。
疲れているんだと思ったら、なかなか声もかけられなかった。
しばらく考えたあと、封筒をそっと沖田の体の上に置くと、神楽はそっと立ち去ろうとした。

けれど沖田の上に置いたはずの封筒が、滑り落ちて音をたててしまった。
(ヤバっ)
と思った時には、視線は、沖田と合わさっていた。
「お、おはようアル」
状況を把握できてないまま沖田は体を起こす。そして神楽が手に持つ封筒を目にするとやっと把握できたようだった。
「ミ、ミツバ姉が今日は実習だから、代わりに持っていくように頼まれたアル」
別に忍び込んだわけじゃないけれど、前回の事があるゆえ神楽の声は意味もなく動揺した。
「サンキュ」
先日の事があるゆえ、また大学に忍び込んだと怒られるかもしれないと思っていたけれど、沖田の表情は優しかった。
「いいネ。どうせ今日はバイトが休みだったアル」
「そうか」
神楽は沖田と会話しながら、隣にそっと腰を下ろした。
「いつもこんな風に勉強してるアルか?」
「ああ」
沖田が勉強している、そう聞くとこの連なる席さえも愛おしく思えてくる。
そんな神楽の横顔をみていた沖田がふいに手をのばした。
気づいた時には、目の前には沖田の顔があった。こんな広い部屋の中、いくら誰もいないからと言えど神楽は今沖田が考えている事を掌で静止しようとした、でも――。
沖田の唇が離れた後、神楽の顔は淡くそまっていた。
「誰か来たらどうするネ」
「どうもしねえ」
そう言うともう一度沖田は熱を重ねた。
どんな言い訳をしたところで、どうせこの男にはかなわないんだ。そう思いながらその熱に応える。

「沖田先輩」
広い教室の入り口から沙良の声が響いた。ハッとした神楽は沖田との間に手をやると体を離した。
沙良は、教室に入ってくると沖田の側にとやってきた。
そうなると当然神楽と顔をあわす事になってしまった。
神楽は顔を見た事はあるけれど、沙良は神楽をはじめてみる。
「こ、こんにちはアル」
沙良は、見た事もない顔をしている神楽がどうしてこの場に居るのか気になっているようだった。
「こいつは、俺の彼女。ちょいと部屋からコレを届けてもらったんでィ」
さらりと言う沖田の言葉に、沙良は驚いたように神楽をじっと見つめた。
沖田に彼女がいると言う事を知っていたのか、そうでなかったのかは分からない。しかし沙良はすぐに神楽に笑みを見せた。
「こんにちは、沖田先輩にはいつも良くしてもらってます」
言葉の中に深い意味が含まれているかどうかは分からない。けれど確かに神楽はこの二人が居るところを何度も見ていた。
軽く頭を応えるように下げると神楽は、すぐに口を開いた。
「あっ、用はもうすんだから私は帰るアル」
沖田の隣から席を立つ神楽。
「じゃあ、門の外まで送っていきまさァ」
「い、いいヨ。一人でちゃんと帰るネ」
「どの口が言ってんでェ、そうやっていつも悩みの種を拾ってくるくせに」
沖田は神楽の髪をくしゃりと遊ばせる。
「そんな事ないアルっ」
「いいから、ほら。行くぞ」
遊ばせていた手をそのまま神楽の肩にと下ろし、掴んだ。
そして沙良の横を通り過ぎていった。


沙良は、通り過ぎた二人の影を一人見つめていた。


・・To Be Continued・・・・・
Category: 彼氏 卒業編
Published on: Fri,  28 2017 21:54
  • Comment: 0
  • Trackback: 0

0 Comments

Post a comment