彼氏 卒業編 20

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イラスト/ シロマイナスクロ yunata



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↓↓↓↓↓↓↓↓ 沖田と門で別れた神楽は、一人部屋に入ると、ベットの上にダイブした。
(あー……、緊張したアル)
沙良と面と向かって初めて顔を合わせた。自分は何度も顔を見ているはずなのに、気の利いた言葉のひとつも出せなかったのに、沙良は自然に笑顔を向けた。
女子としてどうこうと言うより前に、人間として向こうの方が出来上がってる様な気がしてならない。
そう思うとまたすぐ神楽の口からため息が出た。

昨夜の事もあるし、ベットでうつむせになっている神楽は、うとうとと眠気が襲ってくるのを感じていた。どうせこの後の予定もない。そう思うと神楽は睡魔に身を委ねるように目を閉じた。

それから数時間後、神楽は目を覚まし外の明かりを確認した。そしてまだ明るいことを確認すると体を起こした。
あまり考えずに携帯をさがすと、また子からの着信に気がついたようだった。神楽はその手でまた子へとコールすると、数回の所でまた子の声が、携帯の向こう側から響いた。
「遅いッスよ!」
また子の言葉が、耳の奥にキーンと響いたおかげで、神楽は思わず携帯を耳から遠ざけていた。
「ごめんアル、何か用があったアルか?」
知らぬ間にまた子との約束をすっぽかしていたのかも知れないと頭では考えながらまた子に確認する。
「違うッスよ。神楽ちゃん今日休みだって聞いたからお茶でも誘おうかと思ってたんスよ」
「そうだったアルカ、ごめんアル」
「まあ、いいッスよ。別にお茶じゃくても。この後なんか予定でも入ってるんスか?」
「予定?ううん、何も入ってないネ」
「じゃあ、決まりッスね」
また子の強引な誘いはいつもの事だから別に驚く事ではない。神楽は一瞬考えるそぶりを見せたあと、すぐにOKと返事をした。
「分かったネ、場所はどこにするアルか?」
「うーん」
また子が悩んでいる間、どうせ飲むなら皆居た方が楽しいと思った。お妙に連絡して、ミツバに連絡して……そんな事を考えていると、また子が店の名前を言った所でキャッチが入った。
「あ、ごめんキャッチが入ったッスよ」
「分かったアル、じゃあまた後で……」

また子との電話を済ませたあと、その手で神楽はお妙とミツバに連絡を入れた。けれど二人とも今日は既に予定が入っており来られそうにない。また子と会うにしても時間はまだまだある。また沖田が抜き打ちで来てもかまわないように部屋の掃除を先にしてからでも遅くはないだろう。そう思いながら神楽は立ち上がった。

沖田にはLINEでまた子と二人でご飯を食べに行ってくると送り、また子と待ち合わせの場所である店にと着くと、まだまた子が来ていない事を確認し店の奥の方の席についた。
ここの店は、居酒屋だけれど女性が色んな物を少しずつ食べられる様に種類も豊富だ。神楽はまた子が来るまでの合間、時間を潰すようにメニューに手を伸ばした。
(うーん、どれも本当に美味しそうアル)
見れば見るほど全てが美味しそうだ。また子とここに来る事が分かっていたので、小腹もすかせたままだ。神楽は取り合えずドリンクと適当な単品料理を注文した。
「ごめん、遅れたッス」
遅れたと言うほどでもなかったけれど、まさか自分より神楽の方が先に着いているとは思わなかったまた子は驚いていた。
とりあえず、神楽が注文した事を知るとドリンクだけ追加で注文した。
「で、どうしたアル」
別にまた子から食事の誘いがあるのは珍しくないけど、なんかしら話したい事があるのは電話で察しがついていた。
するとまた子はその通りだとばかりに話はじめた。
「こないだ、会ったッスよ」
「誰にネ」
「会ったって言ったらあの人に決まってるッス」
「だから誰にだって言ってるア――」
「いらっしゃいませ」
店員の元気な声と共に、店の中には7人ほどの団体客が入ってくる様子が分かった。店員の声になにげなく店の入り口に視線を向けた神楽は言葉を止めた。
どうしたんだろうと、その視線に続くまた子も思わず声をあげそうになった。
沖田と沙良を含めた大学の生徒達だった。
また子は、神楽にこの事を知っていたのかと目配せをした。それに応えるように神楽はまさかと目を大きくさせる。無言の会話を続けるなか、沖田達は神楽から少し離れた広い席に腰を落ち着けた。

驚く中、神楽は携帯を確認してみると、そこには沖田からの返信があった。論文のカタが着いたから今から飯を食ってくると。
こんな偶然と思いながらも携帯の文面をまた子に見せると、二人の間に沈黙が訪れた。けれどすぐにまた子が口を開いた。
「あの娘ッスよ」
「えっ?」
「こないだコンビニであの娘に会ったッス」
「あー……」
沙良の事は、そこまで突っ込んでまた子に話していないけれど、長い付き合いのあるまた子には察しがついていたのが分かった。
この場所から見える沖田の隣には、沙良が座っている。それは自然にも不自然にも見えるような気がした。
「どうするッス?」
「何がネ」
「いや、出てもいいッスよ」
ただでさえ神楽が気にしているのは知っているのに、こんな場所にいつまでも居たくないだろうとまた子は促す。
「いいヨ、大丈夫ネ」
神楽の言葉に不満そうにしながらも、注文したドリンクと料理はテーブルの上に置かれてしまった。
「食べヨ」
静かにここで食べていれば大丈夫。いつもの様に二人で雑談をしていれば時間なんてあっという間に過ぎてしまうはずだから。
そう神楽は箸を手にとった。

また子に最近起きた出来事や、神楽のたわいもないバイトの事、いつもの様に二人のくだらない話をしながら追加した料理とドリンクに手をつける。そんな事をしながら40分ほどが経過したけれど、一番最初にまた子の口から出てきた沙良の話題には流れる事はなかった。
そんな二人に、沖田の友人か先輩かの中の雑談がアルコールのおかげで声がよく届くようになってきた。
「ほんと~に、沖田と沙良ちゃんはお似合いだ!」
その言葉にまた子のまゆがピクリと動いた。
「ほら、沙良ちゃんもまんざらじゃないんだろう?」
「そんな事ないですよ」
向こう側から聞こえてくる会話に、また子が静かに席を立った。嫌な予感がした神楽は思わず声をかけた。
「何処行くネ」
また子は、今度こそモノ申してやるとばかりににっこりと笑った。
「いいから、座るアル。酒の席の事なんて無礼講の反中デショ」
また子に、気にするなとのそぶりを見せた神楽は、ドリンクに手をつけるも、実際その笑みが無理をしているのはすぐに分かった。
「沖田は彼女居るのかよ?」
男の一人が沖田に声をかけるけれど、それに返答する沖田の声は聞こえてこない。するとだったらまんざらでもない沙良とくっつけばいいと周りがはやし立てるように声を出し始めた。
もう我慢ならんと、席を立ってしまったまた子はアッと静止する神楽を振り切っていってしまった。

ああなってしまったまた子は、イノシシなみに止められない。
そもそも神楽の中でもアレ以上沖田達の会話を聞いていたくなかったのも本音であって、だからこそまた子を止める事が出来なかったのもあった。
また子を止めなければいけないけれど、自分が出て行って「彼女だ」と言うのもおかしいような気がした。どうしたものかと困っている神楽の頭上で、聞き覚えのある声が聞こえ頭をあげた。

「沖田さん?」
沖田のグループの席に到着したまた子は、素知らぬ振りをして沖田の名前を呼んだ。
「あ」
こんな場所でまた子を見た沖田は、気がついた様に声をあげた。
「奇遇ッスねえ」
また子は、気持ち悪いくらいの笑みを沖田に向けた。すると、すぐさま男がつっこみを入れた。
「なになに?この可愛い娘はもしかして沖田の彼女?」
「「違う――」」
と沖田の言葉とまた子の言葉が重なった。そのまままた子は、勢いまかせに次の言葉を吐こうとした。
「オイ」
「何スかぁ――っ」
また子の瞳は斜め上を見ながら、大きく見開いている。
「なななんで晋介様がここに?!」
また子の目の前には確かに高杉が居た。そしてその後ろにいる神楽に理由を求めるように目配せをしてみるが、まさか知らないとばかりに神楽は高杉の後ろで頭を振った。

男は、高杉を見てその雰囲気に圧倒されるも、女子達はその容姿に視線を奪われている。
また子に大なり小なり用事があった高杉は、何度か連絡を入れたけれど連絡の取れないまた子に、場所を聞いていた高杉は直接会いに来たのだろうけど、背中を見せるとまた子は必ずついてくる事を知っているのか、高杉はそのまま店の外に出てしまった。

そのまま残された沖田達と神楽。あの一瞬でまた子が暴走したのだろうと察した高杉の行動には驚いた。しっかり二人分の伝票もテーブルの上から無くなっていた。

「え?何?君超可愛いんだけど――」
台風が去った後、唖然としている神楽の肩に男の一人が手を伸ばそうとした。けれど、その瞬間パシっとその手を掴む音が聞こえた。
「やめてもらえませんかィ。こいつは駄目でさァ」
機嫌が悪いのか悪くないのか、自然なのかそうでないのかは分からないけれど、沖田の紅い視線はしっかりとその男を捕らえていた。沖田の迫力に思わず喉を鳴らし、唾液を飲み込んだ男は伸ばそうとしたその手をサッと引っ込めた。
沖田の態度に感ずくものはあったけれど、確認の意味も含めておずおずと男は神楽に問いただした。
「も、もしかして……沖田の彼女さん?」
「はい……アル」
「おおおお~~~!!」
男達は、神楽の容姿と沖田の容姿を見比べると、思わず驚きと歓喜をいり混ぜたような声をあげた。
公にされた神楽の存在が、よっぽど珍しかったのか男達のテンションはいっきに上がったように、沖田の隣の席をひとつ譲り、そこに神楽と沖田を座らせた。
「沖田の彼女さん、初めまして」
「よ、よろしくお願いするアル」
そう言いながら、手を伸ばす。応える様に神楽が手を伸ばそうとするとやんわりと沖田が止めた。
「おおおおお~~~!!」
沖田の反応が面白いのか、男達ははやしたてる。
「何だよ、隠したかった系かよ」
「可愛い奴だなオイ」
同じ男として、沖田の反応がやきもちやら独占欲の塊なのはすぐに分かる事であり、理解できる感情でもあった。けれどそれがあの沖田だと言う事が面白いらしくてたまらない。
「彼女さん、名前は?」
「神楽と言うアル」
「おお~~、名前も可愛い」
「いつから付き合ってるの?」
「高校からアル」
沖田の口から語られる事のなかった話が、聞けるのが嬉しいのがよく分かる。
「沖田はそんな話を自分から全くしないから、てっきり居ないかと思ってたけど、これじゃ確かに隠したくなる気持ちも分かるわ」
男は、なんだかんだと納得したように頷いている。
「二人、お似合いじゃん」
神楽と沖田を見比べながら指を交互にさし、納得するように言う。
さっき、端から聞いていた言葉が、唐突に自分に向けられてしまって神楽に嬉しさがこみ上げた。
「あ、今度うちのサークルのイベントがあるんだけど、沖田と参加すれば?一般OKだし」
これ以上神楽を他の男の視線に触れさしたくないのか、乗り気じゃない沖田の様子は見てすぐ分かったようだったけれど、あえてそこはスルーをして、男は神楽に問いかけた。
「とりあえず沖田の意見は置いといて、来てみたくない?面白いよ」
行ってみたい……。自分の入れなかった沖田の世界に入る事が出来ると思ったら、行きたくてたまらなかった。でも沖田の様子が気になるのも本当で、神楽は横にいる沖田の方へ視線を移そうとするも、見ないでと目の前の男は頭を振った。少し考えたあと、控えめに神楽は頷くことにした。
すると、乗せられた絵図に沖田は横で呆れたようにため息を漏らした。
「よ~~し!じゃあ決まり」
超乗り気な男をよそに、神楽は沖田の方をやっととみて見た。てっきり自分の世界に入られるのを拒まれるのかと思っていたけれど、沖田の視線は優しかった。


・・To Be Continued・・・・・



Category: 彼氏 卒業編
Published on: Fri,  16 2017 22:01
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