彼氏 卒業編 21

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イラスト 菌うさぎ

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↓↓↓↓↓↓↓↓ 高杉に連れられてまた子が帰ってしまったおかげで、神楽は終始、沖田の隣に居た。大学での沖田の様子を聞くと、可笑しいくらい高校へ通っていた時と同じで、話を聞けば聞くほど面白かった。
これだけの容姿を持っている沖田なのに、どんなに探ってものらりくらりと彼女の存在を話そうとしなかった事、その理由が今日分かって良かったと沖田の友達は言っていた。

散々彼女だと話しを持ちかけられた後、その場は解散となった。沖田からの連絡には、確かに論文が片をつけたと書いてあった。
暗くなった道を二人並んで歩く。昼間の様に沖田の顔を陽の光が照らしているわけもないかわりに、月の光が照らしていた。

「とんだ偶然だったでさァ」
ふいにかけられた沖田からの言葉。本当にそうだと思いながら、応えるように神楽は頷いた。
「本当アル。お店なんていくらでもあるのに、わざわざ同じ場所に来るなんて驚いたネ」」
携帯にヒントなんてひとつも残していない。ただまた子と一緒にご飯を食べていただけだ。沢山ある店の中で沖田達が入ってきたのは偶然に近い奇跡のような気がした。

そんな事を思いながら歩いていると、沖田が立ち止まり顔を覗き込んできた。
「何か嬉しい事でもあったのか?」
「はっ?な、何がアル」
いきなり何を言い出すんだと戸惑う神楽をよそに、沖田はいじわるそうに目の前で笑っている。
「いや、嬉しいって顔に書いてあらァ」
わっとなり、思わずその顔を隠そうとする神楽。そんなの気のせいだと思ってみるけれど、確かに沖田の言葉は確信をついている様に見えた。
それも仕方なかった。場の流れとは言え、沖田の彼女だと公式に認められたのだ。嬉しくないわけがない。
とっくにバレているだろうけど、素知らぬ振りをするように神楽はふいっと顔をそむけた。
「別に、何でもないネ」
目をあわしたら最後、完全に見透かされてしまう。そしてこの男は勝ち誇ったように笑うだろう。それが許せないのだ。
沖田と目をあわす事なく、袖を掴んだ。
「ほら、早く歩くネ」
「へいへい」
沖田はその反応を楽しみながらも足を前に出した。


翌朝、目が覚めた神楽は沖田の部屋に居た。
論文が終わって時間の空いた沖田が神楽をすんなりと返すわけがない。しかも沖田はその論文のおかげで一度おわずけをくらっている。もとより断る気なんかさらさらなかった神楽だけれど、目の前の男の思い描く展開に乗ってしまうのはと反抗を見せるも、それはあっさりと沖田の手により阻まれた。するりと布団の中から体を起こすと、昨夜、脱ぎ捨てられた沖田のTシャツを手に取った。

神楽の今日のバイトは午前中はオフだった。
昨日のまた子の事が気になって、沖田がまだ寝ている事を確認したあと連絡をしてみると、すぐに返事が返ってきた。
【今、どこッスか?】
【沖田の家アル】
まあ、十中八九そうだろうと思っていたまた子。そんな風に始まったlineをしばらくしながら、状況を伝え終わると、まだ目を覚まさない沖田の寝ているベットにと腰かけた。

この手の中にある男を、ずっと手に入れておく事が出来るのだろうか……。ふと、そんな思いが頭を過ぎる。
おでこに手を触れさすと、さらさらの髪が手に触れた。
(私がこいつを好きで、こいつも私の事を好きって言ってるアル)
なのに、どうしてか心のモヤモヤがとれないのはどうしてだろう。
沖田がモテるのは今日、昨日始まった事じゃない。見た事もなかった女子が突然告白してきた事でヤキモチを起した事だって一度じゃ二度じゃない。なのにどうしてあの娘だけ違うと線を引くのか分からない。

(憎たらしい奴ネ、誰のせいと思ってるアル)
小さな反抗だと、沖田の頬をつねって見せると、眠りの中から目を覚ましたようだった。
既に消えてしまった神楽から落とされた小さな痛みの意味は知らないままだ。ただいつもの様に、神楽をそっと自分の方へと抱きしめた。

それから何日か、神楽は普通の日常を繰り返していた。
お妙達と連絡を取り合い、しょっちゅう沖田の部屋に通いながらバイトに行く。
そんな他愛もない日を送っているある日、沖田からLINEが入っていた。用件は、何日か前に行くと行った大学のイベントの事。
もともと沖田は乗り気じゃない事は知っていたけれど、神楽が密かに楽しみにしていた事だった。

どうやらイベントは明日の夜だという。
その日限定で冬の夜のイルミネーション。学生が制作したイルミネーションを競う場でもあり、お披露目の場でもある。
だから一般OKなのだ。
個人的に神楽と一緒に行くならば、どこにだって行きたいだろうけれど、茶化される事を分かっている沖田は最後まで乗り気じゃないらしい。けれど見れば神楽が喜びそうなことも分かっていた。だからあの時、駄目だと言えなかったのだ。
折り返すように、電話をかけると、沖田はすぐに電話を取った。
「よう。お前、明日バイトは?」
「明日は、午前中だけだから大丈夫アル」
狙ったタイミングじゃなかったけれど、バイトの時間もイベントとうまくすれ違っていた事で、ますます神楽は行く気になった。
「分かった。外は寒いだろうから、着込んで来いよ」
「うん」
沖田との電話を切った後、神楽はわくわくとした気持ちが胸の中でいっぱいになった。
(楽しみすぎるアルっ)
流行る気持ちをおさえながら、神楽はバイトの支度をしはじめた。

翌日は、天気に恵まれていた。寒いけれど、雲ひとつない空は、雨の予感をひとつもさせなかった。
既にバイトの時間だった神楽は、いつもどうりに仕事をこなしていく。あと数時間後に沖田とイベントに行けると思うだけで自然と口元に笑みが浮かんだ。

時間はあっと言う間に過ぎた。神楽はバイトを終わらすと、コンビニから出た。
イベントは夕方の陽がくれた後だからまだ時間には全然余裕がある。
沖田に連絡しようと思ったけれど、ふと視界に店頭にならぶブーツが目に入った。今日のデートに新しい靴を履きたいと思った神楽は店の中に入っていった。そしてしばらくすると、新しい靴を履き、履いていた靴を店から貰った紙袋に入れて手に持っていた。
可愛らしいデザインで、冬の夜にもきっとよく映える。
そう神楽は、歩いていった。

「よう、総悟」
久しぶりに事務所で沖田の姿を見かけた近藤は、嬉しそうに声をかけた。
「久しぶりでさァ、近藤さん」
沖田は、事務所の経理をパソコンでチェックしていたけれど、その手を止めると近藤の座っている向かいのソファに腰をかけた。
「どうだ、最近は」
外から帰ってきた近藤の肩には、まだとけてない雪がついている。それを手で払いながら沖田にと声をかけた。
「どうもこうもねえでさァ」
沖田は面倒くさそうに、項をかいた。
「何だ、神楽さんと喧嘩でもしたのか」
最近喧嘩したと言う話を聞かなかっただけに、とうとうかと近藤はその先の話を求めた。
「いや。ただ、あいつと店でバッタリと出くわすなんざ思ってもなかったんでィ」
話の元ネタが分からない近藤は、沖田に話の内容を詳しく聞かせてくれと言った。
「確かにお前の性格を分かってる俺からすると話も分かるが、おそらく神楽さんは相当嬉しかったと思うぞ」
断定できるとばかりに、近藤はあごに触れながら話している。
「ただでさえ、高校を卒業してからお前との距離は離れていく上に、大学に行ってしまったお前には色んな意味で世界が広がっただろう。心の中で分かっていたとしても、寂しいんじゃないんだろうか」
的確な近藤の言葉に、沖田はうな垂れるような格好を取った。
「分かってんでさァ。あいつが寂しいって事も、いらぬ心配をしてるって事も……」

笑いながら、自分の中の感情を隠しているのも分かっている。だからこそ一緒にいる時は自分の手の中から離したくない。離れたくない。でもどんなに行動で示しても、神楽の不安は拭えない。

そんな沖田には、もうずいぶん前から考えていた事があった。
「近藤さん、俺ァあいつの不安を拭ってやれるか分からないけど、少しでも一緒に居てやれるなら、一緒に住んだっていいと思ってんでさァ。ただそれにはまだ俺の力量が足りてねえのも十分分かってるつもりでィ……だから……」
沖田の胸の中の思いを聞いた近藤は、真面目に頷いた。
「そうか。同棲をするとなると二人の距離もぐっと近くなるだろう」
ただ、沖田はまだまだ学生の身分だ。そう簡単に無責任な事を神楽に言い出せない。

神楽への思いと、男としてのプライドを考えると、二人には沈黙しか出てこなかった。


・・・To Be Continued・・・・・



Category: 彼氏 卒業編
Published on: Fri,  30 2017 11:29
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2 Comments

あやか  

久々に、沖神小説読みました!
最近は更新されてない方も多いので、こんなに良い沖神小説が読めることが嬉しいです !

2017/08/06 (Sun) 13:18 | REPLY |   

ツンデレ  

Re: タイトルなし

おはようございます^^

私もなかなか更新が追いついていないので、申し訳ないですi-241
ようやく、今ちまちま創作していますので、出来上がったら、すぐにUPしたいと思っております♪
昨日は、台風の影響で一歩も外に出られず、窓の外を見ると引くくらい雨風が凄くて、必死で雨戸を閉めました(笑)

また楽しく読んでもらえるように、頑張りますね♪

2017/08/07 (Mon) 08:14 | REPLY |   

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