彼氏 卒業編 22

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イラスト 菌うさぎ



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↓↓↓↓↓↓↓↓ 陽も暮れた頃、神楽は沖田との待ち合わせの場所にといた。その足元には買ったばかりのブーツが可愛らしく映えている。
沖田の姿がないかと四方を見ている神楽の視界に、待ち合わせの場所からそう離れていない所で沖田の姿が人中からちらほら見え隠れしたのが見えた。
神楽は思わず手をあげると、分かったと合図するように向こうから軽く一度だけ沖田が手をあげた。

「珍しいな」
来るなり沖田はそう言った。待ち合わせの時間に遅れてくる事が多い神楽のくせに、そうその視線は言っている。
沖田の視線は、すぐに見覚えのない神楽の足元にと移った。新品のブーツは神楽がそう思っていたようにこの寒さの中で可愛らしくその存在をしめしている。それは今日と言う日を神楽が楽しみにしていた現れなのは沖田にもすぐに分かった。

足元に落としていた視線を沖田は神楽の視線にあわしてみる。一言可愛いと言ってほしいのか、楽しみにしていた事がバレバレなのが恥ずかしいのか、フイッと視線をそらす。その表情を楽しむと沖田は柔らかく笑った。
その表情を見ただけで、思っている事を全て見透かされた様な気がして神楽はふくれっ面を沖田に見せた。外を出歩いていたのか頬は真っ赤になっている。それをみた沖田は神楽の手を掴み握りしめた。
「冷てえ手だなオイ」
「うるさいネ、そう思うならさっさと温めるヨロシ」
冷やかしの声には、冷やかしの言葉で返してみるが、二人の表情は笑っていた。

沖田の友達が言ってた通り、イベント会場には既に色んな人で賑わっていた。辺りはもう暗くなっているけれど、イルミネーションの明かりでそこら中が光り輝いていた。
「うわ……すっごいアル」
冬のイルミネーションは、クリスマスが過ぎても街のそこら辺にとあるけれど、サークルの活動内で作ったものとはとても思えないような出来栄えが視界の中に広がっていた。

街の一角を切り取ったようなイルミネーションを周りに置きながら沖田と二人で歩いていく。
「良かったアルカ」
歩きながら、神楽は沖田にそう言った。
「何がだ」
「何がって……」
沖田に対して言いたい事は色々あった。今日この場に来て良かったのかとか、大学での友達に彼女と言う存在を教えるのがいやだったのかとか……。けれど沖田を横にどんな答えが返ってくるのかが分からず、またそれに柔軟に対応できるのかと言われれば、それはあいまいだと思った。
「べっつに!何でもないアルっ」
結局答えが見つからない神楽は、話を切りかえるしかなかった。
「それより、お腹が減ったアル」
神楽の食いじのはりは、今に始まった事じゃない。
「そうだな、何か飯でも食べるか」
言いながら、歩いているとイルミネーションで飾りつけられた可愛らしいレストランが目にはいった。
「ここ!ここが良いアル」
二つ返事で沖田と二人で入ると、この場に来ていたお客で店の中は賑わっていた。
神楽達を店員が確認すると、すぐに声をかけてきた。
「申し訳ありません。ただいま満席になっておりまして、相席でのご用意になってしまうのですが……」
申し訳なさそうな店員を前にして、一瞬だけ沖田とコンタクトを取ると、神楽は快く承諾した。
一礼された店員の後についていくと、神楽の足がその人物を見てピタリと止まった。まさかこんな所で会うなんて思ってさえもいなかったのに……。
「沖田先輩」
二人の目の前には沙良が居た。
まさかの偶然に、沖田も唖然となった。けれど店員は店の中が忙しく、承諾した二人の様子にかまっている暇はない。四人がけのテーブルに腰をかけている沙良の席に座るしか選択肢は残っていなかった。

沙良を目の前に沖田と二人腰を下ろした二人。思ってみれば、ここに沙良が居てもなんらおかしくない話だった。あの日、沙良も同じ席で同じ話題を共有していたのだから。
「あ、何頼みます?」
沙良はもう既に注文を終えているようで、二人にメニューを見せてきた。
「神楽」
沖田は、神楽の事が気になるのかそう名前を呼んだ。
今ならまだ引き返す事が出来る。理由なんてなんとでもつけられる、そんな思いが過ぎった。神楽は、沖田の方を見ると、沖田も同じ事を考えている様に見えた。せっかくの二人のデートだ。誰にも邪魔されたくない。けれど沙良を目の前にして逃げるような真似をしたくないと思ったのもまた本当だった。しばらく考えたと思ったら、神楽はゆっくりと口をひらいた。
「じゃあ、コレにするアル」
神楽の人差し指が選んだのは、オススメディナー。
この場所から神楽を連れ出す事はいくらでも出来たはずだった。だから神楽の答えしだいにはすぐにでも腰をあげようと思っていた。でも出した答えに一瞬だけ息をつくと沖田はそのままメニューの方に視線を下ろした。

「沖田先輩は何にします?」
沖田の視線がメニューに行くと、すぐさま沙良はそう口を挟んできた。
「じゃあ俺はコレ」
沖田が言いながら選んだのは、神楽とは違った品。
「お前、これ好きだろィ」
「え、あ、うん」
大食いである事を自覚しているけれど、まさかこんな場でと神楽は思うけれど沖田は気にしてない様子で店員を呼んだ。

テーブルの上に三人の料理が並ぶ。先に料理に手をつけていた沙良は沖田に話題を振ってくる。
「この後どうするんですか?」
「まだ考えてねえ」
沖田は、沙良の会話にあまり興味もないようで、箸を進める。
「私は、色々回る予定ですよ」
沙良は一人なのだろうか?誰か一緒に来ていないのだろうか?そんな事を思ってみたけれど、口に出すことはしなかった。

座ったのは自分の意思だけれど、だからといって思い浮かべる会話もないので、神楽は沙良が話しかけて沖田かその返答をするのを聞いているだけに置いている。その間にも皿の上の料理はどんどんと減っていって、あっと言う間に沖田の皿の上は空になってしまった。そんな沖田の様子を見ていた神楽に、ふいに手が伸びた。
「神楽」
沖田の言葉に顔を向けると、口元についたソースを指先で拭われた。沙良を目の前に恥ずかしさで顔がかあっとなるが、その拭ったソースを沖田は当たり前の様に自分の口元に持っていき舌で拭った。その行動に神楽と沙良は驚いたように目を一瞬大きくした。
沙良がいる前で平然とする沖田のなにげない行動に、二人して戸惑っているのをよそに沖田はその口を開いた。

「食ったなら出やすぜ」
「あ、うん」
沖田の言葉に従うように、神楽が席を立つと続いて沙良が席を立った。
三人が会計を済ますと、自然の流れの如く外に出た。
「おい」
沖田は外に出るなり沙良にそう口を開いた。
店から出てきた流れで、沙良の行くさきは神楽と沖田の方向と同じ方向を向いている。
「お前は、どこ見て周る予定でィ」
「え?私ですか?えっと……」
沙良は沖田に聞かれたことが嬉しかったのか、半ば適当に指先をむけた。
「あそ」
すると、神楽の肩を引き寄せると沖田は沙良が指した方向とは逆方向に足を向け進みはじめた。
予想外の行動だったのか沙良は驚いたように口を開いた。
「えっ、あのっ……」
「ついてくるな」
沙良の考えなどお見通しとばかりに、沖田は言葉を続ける。
「俺はこいつと二人だけで回る予定でさァ」
まっすぐに牽制されてしまった沙良は言葉が出ないように立ち尽くしている。

沖田の言葉に立ち尽くしているのは、神楽も同じだった。自分の言いたい事はハッキリと言う沖田の言葉が嬉しかったと同時、なんとなく沙良の顔を見れないで居る神楽は沖田に向かってどんな顔をすればいいのか分からなかったのだ。

一体沙良はどんな顔をして、何を思っているんだろう。そんな事を思っている自分と、沙良との境界線をちゃんと引いてくれた沖田の行動が嬉しくて、神楽は思わず誰にも見せる事ない顔をしたまま、すこし俯いた。


・・・To Be Continued・・・・・



Category: 彼氏 卒業編
Published on: Thu,  17 2017 07:48
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