彼氏 卒業編 27

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イラスト / シロマイナスクロ様



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告白の一件も無事にすみ、日常を過ごしていたある日のこと、神楽はまた子と二人でデパートに来ていた。

「やっぱり混雑しているアルな」
神楽が手に持っているのは、可愛らしいラッピング用品の中のひとつ。
「そりゃそうっスよ、バレンタインまでもう後、一週間しかないっスから」
バレンタインまであと一週間、本当はミツバも誘ったけれどあいにく予定が合わず、また子と二人してここに神楽はいた。
デパートには、控えるバレンタインの準備をするために、女子が至るところに群がっている。
「神楽ちゃんは、買う派、それとも手作り派っスか?」

手作りでいきたいのは山々だが、どうせなら綺麗なチョコをあげたいと思っている自分もいるのも確かだ。
けれど、やっぱりここは彼女の特権で手作りで頑張りたい……。
「うーん、一応手作りのつもりではいるアル」
「また子はどうするアル」
「私っスか?勿論買うに決まってるっス」
てっきり、手作りだと意気込んでいると思っていた神楽は、その言葉を聞き一瞬驚いたそぶりを見せた。
けれど考えてみれば、あの高杉の性格を考えると確かにまた子は正しい選択をしている。意気込んでお菓子を作ったはいいけれど万が一失敗でもしたもんならば、容赦なくあの男は口に入れてはくれまい。
それを分かっているまた子はさすがと言うべきか、神楽は、感心してしまった。また子は買うなら最高級のチョコレートを狙っているらしく、手に取るものはすべて高そうな物ばかりだった。

「やっぱり私も買った方が……」
「何言ってるんスか。沖田さん絶対楽しみにしてるっスよ。神楽ちゃんからのチョコ」
「うーん」
「大丈夫っスよ」
沖田の事だ、高杉の様になにかの間違いなどありはしないと思っているまた子は、自分の手を止め、神楽の腕を引っ張った。
「こっちこっち、材料を揃えるっス」
「わ、分かったから手を離すアルっ」
そんなこんなで、神楽はまた子とデパートの奥の方へと消えていった。それからバレンタインまでは、あっと言うまに過ぎていった。
「よしっと」
バレンタインまでチェックをしていたカレンダーに、大きく♡と書いた赤ペンが14日を示す。
前々からバイトは休みをもらっていたので、朝から準備に取り掛かれる。材料をチェックして、レシピを確認しながら作業を進めていく。神楽がバレンタインに選んだのはトリュフだ。チョコレートの温度がちょっと上手くいかなくて歪な形になってしまったけれどなんとか出来上がったトリュフを冷蔵庫に入れると、ラッピングの準備を始めた。

一時間後、出来上がったトリュフの入ったラッピング箱を手にとり、神楽は部屋を出ていた。
待ち合わせの場所は、大学の館内にあるカフェ。本当は沖田の部屋でゆっくり食べて欲しかったけれど、今日は一日授業がある沖田との時間をわざわざとってもらったのだから、不満はなかった。

カフェの中の一席に腰を落ち着かせると、バックの中からラッピングされたチョコレートを取り出した。
見下ろす神楽の顔には、自然と笑みが浮かんだ。どんな形の悪いチョコレートであっても、沖田ならきっと喜んでくれるに違いないと知っているからだ。

授業が終わると言った時間はもう過ぎている。
もうすぐ沖田が来る頃だと、神楽は入り口をみるとちょうど沖田が入ってくる所だった。
「待ったか?」
「ううん、全然アル」
言いながらも、神楽は早く渡したいとラッピングされた箱を、沖田の方へと促した。
「はいアル」
神楽の照れた顔が沖田の視界に入る。
沖田は、神楽から渡された箱のラッピングをほどいていく。
小さな箱の中には、ちょっと形の悪いトリュフが4つ入っていた。
「か、形は悪いけど……味は、大丈夫だと思うネ」
大丈夫だと思うけれど、沖田を前にすると急に不安になってしまったのも本当だった。
けれどもう、チョコレートは沖田の手の中だ。どうしようもない。
そんな神楽の様子がおかしかったのか、沖田は少し笑いながら、チョコレートに手を伸ばした。
「あっ‼」
口へ入る瞬間に、神楽が大きな声を出したので驚いてしまった。
「なんだよ」
「お、美味しくなかったら正直に言ってネ」
味見はしたけれど、正直不安な気持ちがある。
「はいはい」
沖田はもう一度笑いながら、今度こそチョコレートを口に運んだ。その様子をじっと見ている。
「――そんな顔しなくても、ちゃんと旨いよ」
柔らかい顔でそういった沖田の言葉に、神楽はわっと顔を喜ばせた。
「良かったネ」
沖田が残りのチョコレートに手を伸ばすと、あっと言う間にトリュフは箱の中からなくなってしまった。最後に食べたトリュフのココアパウダーを舌で舐めとった所で、入り口から、沖田の友達の声が館内に響いた。
「沖田ぁああっ」
嘆くようなその声は、手にとっている大きな段ボールで隠されている。
何事かと驚く神楽の側に、どんどんと近づいてくると、それは二人が座っている机の上にドンっと置かれた。
「お前、これどうすんだよっ」
座っている視線から見えず、思わず立ち上がった神楽の視線には、段ボールに詰められた大量のチョコレートが入っていた。

ボー然となる神楽は、空いた口がふさがらない。
(もしかして、これ全部こいつあてアルか)
沖田がモテる事は今にはじまった事じゃないのは十分知っている。けれどこうやって目の前で見せられるとやっぱり驚いてしまう。段ボールの中には、小さいものから大きな物までいろいろなラッピング箱が入っていた。そしてラッピングされた箱の隙間には、メッセージカードが挟んである。

そんな神楽を目の前にしている沖田は、余計な事をしてくれた友人に対して冷ややかな視線を送っていた。
段ボールの中のチョコレートと沖田と神楽、そして友人が囲むテーブルに、さらに声が追加された。

「沖田先輩」
声がした方に一斉に視線が行った。そこには沙良、そして神楽の見覚えのない男性が立っていた。
(誰アルカ……)
そう思った神楽だったけれど、どうやら沖田の方は面識があるようだった。
「どうも」
「噂に聞いているよ、沖田君」
話の会話からすると、どうやら沙良が連れてきたのは、どこかの偉い教授だろうと想像がついた。沖田の評判を聞いたのか、直接会いにきた男と沖田がたわいもない会話をしていると、ふと段ボールの中の大量のチョコレートに目が行ったようだった。
「そうか。今日はバレンタインなのか」
言いながら、沖田の方を見ると、「さすがだね」とつけくわえた。
そして、沙良の方を見ると言葉をつづけた。
「君は、用意していないのかい?」
「え、あ、はい!用意してます」
そう言うと、沙良はバックの中から綺麗にラッピングされた箱を取り出した。
「先輩、どうぞ」
微笑む沙良の手の中の箱が、沖田に差し出される。沖田は一瞬神楽の方を見たけれど、受け取るのが当然だと思っている教授を目の前に、沙良を邪険にする事はさすがにできなかったのか、息をはきながら受け取ってしまった。
「どうも」
「さすが沖田君はモテるねえ」
教授は、沙良は勿論、神楽の事をも取り巻きの一人と見ているようだった。
だけど、この状況を前に神楽が自分は沖田の彼女だとでしゃばるような真似をする事は出来なかった。しかもここは沖田の通っている大学だった。
「次の講義での事を少し話したいんだが、いいかな?」
そう教授は沖田の意見を求めている。
もともと、授業の合間に来ていたのであって、沖田はまだこの後もすぐ授業がある。こんな所でわがままを言いたくなかった。
教授は、沖田と沙良を連れてカフェから出ていくと、テーブルには、大量のチョコレートが残った。
不可抗力とは分かっているけれど、沖田は沙良からのチョコを受け取ってしまった。目の前にこんなにもチョコレートがあるのに、神楽はたったひとつのチョコレートが気になって仕方がない。
(あのチョコレート、どうするアルか)
食べて欲しくない、そう思っているけれどそれを沖田の前で口に出そうとは思わない。言えば心の狭い人間だと思われるかもしれない。
どうする事も出来ないまま、神楽はカフェから出て行った。無事にチョコレートは渡せたし、美味しかったとも言ってもらえたのに、どうしても神楽の心は沈んだままだ。
そんな思いで歩いていると、向かい側からくる身体に頭をぶつけてしまった。
「痛っ、、ご、ごめんアル――」
神楽にぶつかったのは、この大学に通っている学生らしき男達だった。
「あれ、可愛いじゃん」
「名前は?」
「学部どこ?」
大学から出てきた神楽を、ここの生徒だと思ったのか間髪いれずに言葉をせめたててきた。
「ど、どいてアル」
神楽の口から出てくる言葉は、驚くほど小さかった。
目の前には五人の男が居る。声をかけなれているのか、遊び慣れているその外見は神楽に興味を持ちぐっと近づく。その光景は、あの出来事を思いださせるには十分だった。
「や、やめて――」
そういうのがやっとだった神楽の反応を面白がるように、腕を掴んだ。
「いいじゃんいいじゃん、遊ぼうぜ」
心臓が早すぎてこわれてしまうんじゃないかと思うほどに、神楽の鼓動は高い。やめて欲しいと思っても、それは首を振る事でしか表現が出来ないほどに頭はパニックになっていた。
頭上で男達が何かを言っている。けれど神楽には何ひとつ理解が出来なかった。出来る事といえば、拒否をしようと頭を振り続ける事だけ。
ここから一歩も動いてやるものかと思うけれど、意思とはうらはらに動く自分の身体を何とか踏みとどまろうとするように、神楽は両足に力を入れ踏ん張った。けれどそんな抵抗もむなしく男達の手によって神楽の身体は簡単に移動していく。
たまらず怖くなった神楽は視界を閉じるように目をぎゅっととじた。
けれど次の瞬間、さっきまで掴んでいた腕は、沖田の腕にねじりあげられ、神楽の視界の中に沖田の姿が飛び込んできていた。

「こいつに、何してんでィ」
沖田の殺気が、今しがたまで神楽を掴んでいた男に向けられる。
男の集団は沖田の顔をみるなり、喉をゴクリとならしたのが分かった。そしてその流れのまま神楽の方へと視線をやった。
「おまえ――沖田の女か」
今しがた神楽の腕を掴んでいた男は、まずい女に手を出してしまったとの表情をみせた。
「うるせえ!俺がてめえに聞いてんでさァ」
沖田の手は、首元の力をぐぐっといれた。今にも殴りだしそうな沖田の後ろで、きゅっと袖を神楽が引っ張った。その後ろで神楽は静かに首を振った。
沖田の怒りは収まらない様だったけれど、目を閉じ息を吐いて、男達の方に向き直った。
「失せろ。二度と面みせんじゃねえぜ」
そういうと、男の胸板をドンとついた。衝撃に数歩下がるとそのまま去って行ってしまった。沖田はそっと神楽の手を握った。
「大丈夫か?」
神楽の手は震えていた。沖田がそっと抱きしめるとゆっくりと背中をさすった。しばらくすると、落ち着いた神楽は沖田にだけ聞こえるくらいの小さな声でつぶやいた。
「……うん、大丈夫アル」
あれだけ高校の時に暴れていた沖田が、神楽の前で暴れなくなったのは、少しでもあの出来事を思い出させたくないと思う心からだ。いつもくだらない事で笑って、しょうもない事で頬を膨らませて怒っているくらいがいいと思ってこそだった。
だから、腹の中が煮えくりわたっているのに、我慢が出来る。それもこれも、神楽の事を思ってこそだった。
「歩けるか?」
「うん」
そうは言うものの、まだ歩けるような状態じゃないのは分かる。
「よっと」
沖田はそう言うと同時、神楽の身体がふわりと浮いた。
驚いた神楽が何か言い出す前に、沖田は先手を打つ。
「落ちないように、しっかり捕まっとけよ」
すると神楽は、抱きかかえられている身体をゆっくりと沖田に預けるようにし、沖田の首にぎゅっと手をまわした。
さっきまで、破裂すんじゃないかと思っていた心臓が、沖田が一歩あるくたびに、落ち着いていくのが分かった。


・・To Be Continued・・・・・








Category: 彼氏 卒業編
Published on: Fri,  27 2018 20:12
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2 Comments

おはぎマン  

最高ですね!

何度もコメントすいません!
今回の話もとても面白かったです!沙羅からのバレンタインチョコレートを受け取った沖田を見た神楽の気持ちが本当に共感できました!これからも楽しみにしてます!

2018/05/12 (Sat) 00:12 | REPLY |   

ツンデレ  

Re: 最高ですね!

コメントありがとうございます(♡ >ω< ♡)
いつも楽しく拝見させていただいてます♪
そういえば、バレンタインのお話をかいてないなと思いかいてみました^^

今、頭の中でいろいろ練ってはいるんですけど、なかなか形になるところまでまだ持っていけてなくて……。
でも、少しでも楽しみにしてくれている読者さまの為にも、頑張ります‼♪

私の更新が遅すぎて季節についていけてなくて、申し訳ないです(ू˃̣̣̣̣̣̣︿˂̣̣̣̣̣̣ ू)

2018/05/21 (Mon) 19:51 | REPLY |   

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