Honey Girlの悪夢 act 37 

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↓↓↓↓↓↓↓↓ 午前7時ジャスト。朝の天気予報を見ている神楽に、一本のコール音が聞こえた。
食パンを、口にかじっていた神楽は手元にあったコーヒー牛乳でそれを一気に奥へと流し込む。
その片方の手で、携帯をとった。

あれから、3日……。

コンコンコン。
神楽のアパートのドアの向こう側から、人差し指でのノック音。
「はぁーい」
ドアの向こうにいる人物に、声をかけると、鏡の前で、最後のチェック。
「よし、完璧アル」
思わず、笑顔の練習なんかしてみたりして。
コンコンコン。
二度目になる音は、どうやら催促の知らせである。
もう一度返事を済ませた神楽は、玄関へと足をむけ、そのドアの前にと立った。
息を吸う。そして吐く。




「遅え」
けだるそうに、面倒そうに、その先に立っていたのは、沖田。
彼の姿を目にした神楽は、さっき練習した笑顔を見せた。



ねえ、本当に重くないアルか……?

沖田の腰へと、両手を置き、涼しげな風をうけているのは神楽。

はっ、なめんじゃねえ。

ぶっきらぼうに、その自転車をこいでいるのは沖田。
あれから、三日。

「全く、いきなり引っ越せ、だなんて、お前も横暴アルナ」
沖田が神楽に、この話を持ちかけたのは、あの後すぐの事だった。
住宅雑誌の一ページ。赤い大きな丸で囲われたその物件は、沖田のすぐ近所。

この話は、神楽に話を通すことなく、簡単に決まってしまっていた。
けれどこの話が、自分のためだと言うことが、すぐに理解できた神楽は、少々、戸惑いを残しつつも、OKを出したのだった。

そこから数日、神楽のアパートのドアをノックするのは、沖田の役目となっている。そして、今、神楽を乗せている自転車は、沖田いわく、姉のおさがりだと言うこともあり、少々女々しさを持ち合わせたデザインではあるが、二人して乗るには、丁度いいデザインになっていた。

朝の風が、沖田にぶつかった後、その香りを神楽へと届ける。

「いい、匂いがするネ」

「あァ? 何かいいやしたかィ」
決して重くはないけれど、必死そうに、その自転車をこいでる沖田の耳に、今の神楽の独り言はどうやら届いてない様子。自転車の後ろ、ほんのちょこっと、沖田の制服をつまんでいる神楽が、勢いよく、沖田に抱きついた。

「何でもないヨ!」
いきなり大声で、叫ばれた声に、沖田は、意味が分からない。
でも、さっきまで、遠かった二人の距離を、神楽が縮めたのは、分かった。

あれから三日。

引っ越してからすぐ、沖田はこの自転車を神楽の前へと差し出した。
差し出すだけ差し出して、その日、すぐに帰っていった彼の思惑は、はじめ神楽には分からなかった。
でも、翌日、沖田がこのアパートを勧めた理由も、ミツバのおさがりであるかどうかが不確かなこの自転車の意味も、朝のお迎えの意味も、すぐに、分かりにくい沖田からの、ぶきっちょな優しさだとわかった。

電車に、乗らなくていいように。
二度と、出会うことが、ないように。


「ねえ……あいつら……」

風ふくなか、背中から、ほんの微かな神楽の口からでた言葉。胸の中のモヤモヤ、あの悪夢の出来事は、けっして、神楽の中から、なくなった訳じゃなかった。
今でも時々、とりこまれそうになってしまう現実。
あれは確かに、自分の身に起こった出来事だった。
まるで、悪夢の様な、日常。
自分が、自分じゃなくなっていく日々。
記憶が途切れ、人格さへもなくした気がしたあの、まるで夢の様な、でも、けっして、夢じゃない、出来ごと。

全身が総毛だって、吐き気さへ催すような……。





キュッ

唐突に、急ブレーキをかけられたせいで、神楽は、その背中で鼻をぶつけてしまう。
「痛っ、おま、鼻がつぶれてしまったかと思ったア……」

「守ってやる」

背中ごしに聞こえた声は、筋の通った沖田の声。


(…………聞こえてたアルカ)
だって、あんな小さな声。この吹き抜ける風に消されて、ぜったいに聞こえなかったはず。

「オメーは、ぜってぇ、俺が守りまさァ」
一体、どんな表情で、言ってるんだろう。背中ごしじゃ、その表情は、分からない。でも、自然に、頷いてる神楽がいた。
馬鹿アル……、なんでこんな朝っぱらから……。

思わず、沖田の制服に、鼻先を擦り付ける。

「――――ぜったい?」

あぁ、でも、この言葉は、愚問。
聞かなくても分かってる。何があっても、絶対。こいつは……、絶対。

きゅっと、沖田の制服をつかんだ。

あの悪夢に取り込まれそうになった時、何度だって、助けてくれたのは、この男だった。

さっきの言葉、もういっかい、聞かせて……。神楽はそう、沖田の服をひっぱる。
すると、背中を見せていた沖田が、ゆっくりと、神楽の方へと振り返った。
思わず、神楽の表情は、わっとなった。背中ごしにだからこそ、かけれた言葉。
でも、こいつは、振り向いた。

沖田の顔は、神楽と同じく、もう一度……。そう言っていた。

その顔は、至って、まじめで、いつもの彼とは、ちがって……。

「なっ……何アル……そんな顔し……」

思わず俯きそうになった神楽の顔。沖田は、彼女の手を掴む。

緊張して、神楽の頬は、真っ赤にそまった。


「かぐら」

呼ばれた時には、沖田の掌は、神楽の頬へと触れていた。
自分とは違った、綺麗で、でも無骨な、男の掌。恥ずかしくて、下唇を噛んだ。



その唇に、沖田の人差し指がふれる。

「ちゃんと……」

頬をそめたままの神楽は、今、沖田が落とした言葉の意味が分からない。

だから、ゆっくりと顔をあげた。

その瞬間、ふわりと、わずかな感触が、唇にふれた。
たった今、触れた温度は、間違いなく、この目の前にいる男のもの。

神楽は確かに覚えていた。記憶が曖昧ななか、一度目のキスも、二度目のキスも、ちゃんと……。
でも、違う。たった、今、落とされた温度は、今までのキスなんとは、全然……。

「これが……」

言いかけた、沖田は、また神楽に背をむけた。
多分、だけれど、神楽に、沖田の思いがつたわったのが分かった。



・・・・To Be Continued・・・・・














Category: ★Honey Girlの悪夢
Published on: Fri,  27 2014 14:57
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