Day After Tomorrow

最終話

↓↓

「じゃあ、完全なあの娘の片思いって事アルカ?」

志村宅、テーブルの上に置かれているのは、土産の品。お妙は台所から持ってきたお茶を神楽の前にとさしだした。

沖田とのプチ旅行から帰ってきたのはほんのついさっき。
神楽は万事屋に顔をだすと、そこは蛻(もぬけ)のからだった。どうやらいつものパチンコにでも行ってるんだろうとあきれながらもお土産の苺まんじゅうを台の上におくと、神楽は志村宅へと顔だしたのだった。

買ってきたであろう土産の箱を、悪びれもなくビリビリとさくと、神楽はそれに手をつけた後、出された湯呑に手を出した。

「そうなの、沖田さんと年も一番近いし、腕も立つ。そうやって任命されたはいいけど・・・・・・ようするに、一目惚れだったみたいね」

今回、散々と振り回した張本人の話を、先に、切り出したのは、お妙だった。
お妙からの情報は、新選組の近藤からのもので確実だった。
別にききたくもないけれど、近藤が何かにつけて家にくるもので、初めは槍でつきさして追い返していたけれど、話が沖田と神楽の事になると、お妙も別として、近藤の話に耳をかたむけたと言う。

護衛だなんだと表向きには言えない事情があるために、沖田との密会話がでたときに、そのままにしていたと言う。
けれどその話は予想以上に街に広まってしまった。
その広めた張本人が、娘本人だったと言う・・・・・・。

「謝ってたって」
「えっ?」
「神楽ちゃんに、ごめんなさいって」

沖田が何度も呼ばれたあの後、娘は一世一代の想いを沖田に告げていた。
結ばれないのは分かっている、その緋色の瞳の向こう側にいる女性がいる事もちゃんと知ってる。
でも側にいてくれる時、守ってくれる安心感、それを身近で感じてきた。
ほんのひとにぎりの想いをぶつけたい、もしかしたら、もしかしたら、そんな想いを込めて・・・・・・。


あの日、思いをぶつけてみた。




純粋な娘の瞳は、まっすぐに見ていた。沖田の瞳を。
ぶれない瞳の中に、もうすでに答えを見つけてしまったけれど、引き下がれなく、抱えきれなくなった恋心を簡単に捨てることはできない。ガラスの破片ほどの期待にすがりついてでも、欲しかった。

沖田は、見つめられる視線から、ほんの一度だけ視線をそらしたあと、もう一度まっすぐにと見返した。
左手首を指差すと、口を開く。
「ここに、鎖でつながっている奴が居るんでさァ」
ごめんとも、悪いとも、言わないくせに・・・・・・。
沖田の瞳は、出会ってから、一番に優しかった。

「そんな頑丈なものじゃ、私じゃ外せませんね」
これが最後の笑顔だからわらいたい、泣き濡れた顔でもいい、その最後に映る視界の中、笑った女でありたい。
滲む光景に、思わず一度だけまぶたを閉じてしまった。
次の瞬間、開いた世界には、沖田の姿はなかった。


沖田に思い寄せる気持ちが分からないわけがない。自分の中で何度経験してもなれない思いだからこそ、その気持ちがわかった。だからこそ、神楽の胸は痛んだ。



「ほら、そんなしんみりしちゃ駄目よ」
お妙の言われながらも、神楽は滲んだ涙をこする。
「今日は、報告にきたんでしょ?」
お妙の視線は、この家に入ってきた瞬間からそれに気づいていた。

話す前からばれてしまったと神楽の頬は淡くそまる。
口をひらく変わりに、お妙にと、その薬指に光る、沖田からもらった指輪を見せた。
「これは・・・・・・そう言う事って思っちゃってかまわないのかしら?」
意地悪なお妙の質問はいつもの事だけれど、今日に限っては、神楽も胸のうちを早く話したくて、聞いて欲しくてたまらない。
「プロポーズ・・・・・・されちゃったアル」

お妙は、神楽をぎゅっと抱きしめた。
「わっ!姉御痛いアルっ」
日頃、近藤退治に腕をふるっているお妙の腕力は相当なもので、下手したら神楽を絞め殺さんとばかりでしめつけてくるが、痛いといいながらも、神楽は笑った。




場所は変わって、屯所。
神楽を送り届けたのはついさっきの事。そこには沖田が居た。
その姿はいつもどうりの隊服である。
「おい、総悟」
呼んだのは、彼の直属の上司である土方。
手土産を持ってきたと思ったら、自室に帰り着替えてきた沖田をみるなり声をかけた。

ついこの間まで実質ハードな任務をさせていたのは自覚している。
そして神楽との仲がいざこざとなったのも、だからこそ、今日は勿論の事、大きな仕事が片付いた今、少しの休暇をやったはずだった。

「なんですかィ、土方さん」
気だるそうに返事をしたのはいつもの沖田だ。
「何してんだテメーは」
間違っても収集をたてたつもりはないし、この後、かける予定もない。

「いやぁ、アンタをちょっくら殺りにきただけですぜィ」
挑発的な視線と、手には竹刀、向かう方向は土方。
「ちょっくらってなんだっ! 殺りにきたってふざけてんのかテメー・・・・・・っ!!」

加えていたタバコが、すっぱりと切り口をそのままに、その半身と残りの灰が下へと落ちた。
一瞬の事に唖然としてしまったが、どうやらその瞳はマジだと書いてある。

転がった竹刀を土方は手にとる。沖田は首や関節を右に左にと動かし、柔らかくする。


「ひと汗掻きたい気分なんでィ、悪りィですが、付き合ってくれやすかィ?」

からかっているのかと思った沖田の瞳は、まっすぐだった。

屯所の庭で、二つ交じり合う竹刀のぶつかる音がする。ただそこには会話はない。
その音だけは激しくぶつかっている。

そんな中、先に口を開いたのは土方の方だった。

「そういやぁ、あの娘の事は片ァついたのか」
言った瞬間、風が切れる音がし、鋭い竹刀が土方の頬をかすった。
「ええ、ご心配かけました」
沖田の表情は無だけれど、なぜか竹刀に込められているのは殺気だった。
ここでようやく、土方は沖田に誘われた意味が分かってきたようだった。
そして分かった上で会話を続ける。
「じゃあ、嬢ちゃんの方の機嫌はなおったかよ」
ひゅっと沖田が消えたかと思えば、目の前に、寸での所で後方へと飛び退いて、太刀を交わす。

「おかげさまでさァ」

沖田は、近藤からの任務に対して、愚痴こぼしは一切ない。
そのくせ色々と頭の回転は人よりすぐれているため、内側に溜め込む事は多々ある。けれど本人はそれを表にださない。
けれどそんな沖田がこんな風に誘ってくる時、ごくまれにだけれど、感情をぶつけてくる時があった。

遅かれ早かれ土方はその理由について気づくけれど、沖田の胸の内が分かってしまえば、土方の手のなかの竹刀はおろされていた。
「悪かったな」

土方の言葉に、一旦、沖田の竹刀がおろされた。
別に謝って欲しかったわけじゃなかった。任務だから仕方ないと思っていたし、割り切っているつもりだった。
けれど、同時に二人もの女を泣かせてしまった事に間違いはなかった。

決して叶わない思いだとしりながらも、それでも思いを聞いて欲しいと願い、
我慢ばかりしている天邪鬼は、自分の事が恋しいと、少しでも会いたいと願い、
そんな二人の女がいた。

「別に・・・・・・」

振り返ってみて、涙をみてきた事は何度だってある、泣かせた事もある。
それを割り切れなくなってしまったのは、神楽と出会ってからだ。

人として、何か大切なものをなくしてしまった自分に、一から手にとって教えてくれた。
だからこそ余計に、人の感情をうけいれた時、言い表せない感情が胸のなかでチクチクと痛んだ。


たった一瞬だけれど、その思いから逃げ出したかのように視線をそらしてしまった自分を後悔した。
きっぱりと断れなかったのは、その思いが本気だと分かったからこそ、あの時、あの瞬間、あれが精一杯だった。
でも、こらえきれなくなった涙が頬をつたった時、やりきれない思いが胸の中をしめた。

「それでも、俺にはアイツだけなんでさァ」

なにふりかまってられない、唯一思い通りにならない、初めて柔らかい肌に触れた時、この女にだけは頭があがらなくてもいい、そんな事さえ思ってしまった。
なのに、泣かせてしまった事に対して、任務のせいだからと愚痴なんてこぼすつもりはない。

だからこそ・・・・・・。

「悪りィが、土方さん、気が済むまで付き合ってもらいやすぜ」
「上等だ、バカヤロー、許してくださいって言われても止めてやんねえぞ」

おろしていた竹刀を、二人同時に構えた。
間合いをとって、じりじりと砂地を移動する。二つ同時に影か消えたと思ったときには、太陽を隠すように、竹刀を振り上げ飛んだ影があった。



夕刻も終わり、神楽は屯所へと顔をのぞかせた。
丁度歩いている山崎を見つけると同時、向こうの方も気づいたようだった。
手招きをし、山崎を呼んではみるが、、神楽の要件はきかづとも分かる。
そっと指刺したさきは、沖田の部屋だった。
「だいぶ疲れているみたいですから、もしかしたら寝てるかもしれませんよ」
きっと起こしたのが自分ならば、どんな刑がまっているやもしれないけれど、相手が神楽限定で、それは緩和されるのは承知の上。神楽は山崎に簡単に礼をいうと、その部屋をそっと開けた。


山崎の言うとおり、沖田は大の字になったまま、部屋の真ん中で寝息をたてていた。
(本当に、寝てるアル)

ゆっくりと部屋に入ると、そっと閉める。
沖田の寝顔をみるのはもうなれた事。だからこんな風に深い眠りに入っているときは、よほどの事がない限り起きないとしっている。

あれだけのハードな任務をした後からの旅行、多分自分が思っているより、ずっと体はつかれていたんだろうと今になって気づいた。そんなに無理をするなと思った反面、そこまでしてくれた沖田の気持ちが嬉しくてたまらなく憎まれ口がでてしまう。
そっと髪をなでると、やわらかい髪が神楽の手の中をすいた。

まるで愛刀の剣先のようにトゲトゲしていたものが、分からないくらいのスピードで柔らかくなっていたのを見てきた。
全部が自分のおかげなんておもっちゃいないけれど、少なくとも、刺がなくなった分、弱くなっただなんだとぼやいていた沖田に、愛という感情を初めて教えたのは、自分だと思ってるのが実は自慢だなんて、きっとこの男は微塵も気づいていないに違いない。

喧嘩なんていくらでも付き合ってやる。背中合わせて口も聞かない夜が何日だって続いたっていい。

この世界、何度生まれ変わったとしても・・・・・・。
「私には、お前だけネ」
神楽の頬から落ちた、たった一滴の涙が、沖田の頬に落ちた。それを拭おうとした神楽はそこに手の伸ばす。
細い、手首は沖田の手によって掴まれた。


「そりゃ、こっちのセリフでィ」


どのタイミングで起きてしまったのかと、思わず逃げてしまいそうに、なる神楽の体は、沖田の手によってひかれてしまう。
慌てふためく神楽の顔を、一番近くで見ていたい。そんな事は一生かかっても言うもんか、思う沖田は神楽の唇に甘く噛み付いた。


fin

Category: Day After Tomorrow
Published on: Fri,  20 2015 12:33
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6 Comments

nnn  

この作品見て少しイライラ?
私が神楽なら、目の前でいくら護衛とはいえ、他の女の所に行った瞬間に別れます(笑)

ましてや、土方や近藤がいくら護衛の為とはゆえ、そんな任務につかせて、神楽に言わないのは、矛盾してます。
 
説明に」沖田×オリキャラの表示が有れば、絶対に拝見しっませんでした。
沖神以外の、CPが苦手な人もいるので、もう少し配慮をお願いします。
 

2017/06/09 (Fri) 15:30 | REPLY |   

ツンデレ  

Re: タイトルなし

こんばんは。コメントありがとうございます。
まずは、オリキャラの表記がないがために不愉快な思いをさせてしまって申し訳ありません。
一話の冒頭に(オリキャラ)と表記致しました。

コチラのブログの小説では単調なお話にしない為と、お話の幅を広げるためにオリキャラは随所に出ております。
今、続いている話では彼氏・卒業編や、その他のお話しにもオリキャラが小さくも大きくも登場しておりますので、申し訳ありませんがもし次回ご覧くださる事がありましたら、そちらをご了承した上でご覧くださると嬉しい限りです。
勿論、こんなブログは不愉快だと思われましたら、けっしてご無理は言いません。

ストーリーに関しては、ご感想としてお受けさせていただきますが、お話の流れに反映はしないように心がけております。
ご覧くださる読者様がいる分、ご感想や感じ方の違いはどうしてもあり、そこを乗り越えた上で面白いと思い更新を心待ちにしてくれている読者様の為にコツコツとになっていますが、創りあげています。

それでも宜しければ、またご覧くださる事を心からお待ちしております。

2017/06/09 (Fri) 22:37 | REPLY |   

あやなつき  

ご無沙汰してます

お久しぶりです!
なかなか此処に来る暇がなくて…
申し訳ないです!><
久しぶりに来てみたら、彼氏卒業篇が進んでて嬉しかったです!
私は明日、実写銀魂観に行くつもりです!
銀魂イヤーばんざーい!!

2017/07/15 (Sat) 02:15 | REPLY |   

ツンデレ  

Re: ご無沙汰してます

お久しぶりですi-265
逆に、あまり更新できてなくて申し訳ないです。
もっと更新したいけど、なかっなか執筆が進まない&時間がなくて……。

いま、ちまちま創作してますので、また頑張ってあげたいと思ってます♪
銀魂の映画、公開されましたね!
私は、DVDが出るのを待つ予定ですが、楽しみですっ!!
あやなつきさんも、楽しんできてくださいね★

2017/07/16 (Sun) 10:24 | REPLY |   

あやなつき  

こんにちは!
実写映画面白かったですよ!
私が観に行った時は、上映30分ぐらい前に行ったのですが、既にあと15席くらいしか空いている席が無くて、銀魂の人気さが私は凄く嬉しかったですw
ついでにファミリーマートのキャンペーンでやってた銀魂缶バッジも沖田と神楽ちゃんを貰いましたw
ツンデレさんも、「銀魂イヤー」満喫してくださいね!
以上、報告でした!w

2017/07/25 (Tue) 12:03 | REPLY |   

ツンデレ  

Re: タイトルなし

こんにちは^^
銀魂の映画が大ヒットしているとニュースで見るたび私も観たい気持ちでいっぱいになりますが、なかなか映画を見に行く時間がないので、とりあえずレンタル出来るのを心待ちにしながら、銀魂の俳優さんたちの情報をチェックしてます^^

ブログの方もいま、かなり日常的にバタバタしてて、そんな中でやっつけに創作したのをUPしても面白い作品が出来てないのは目に見えているので、しばし自分の中でも我慢の中に居ます!

でも、出来るだけ早く更新したいと思ってるので、楽しみにしてて下さいね^^

2017/07/31 (Mon) 17:44 | REPLY |   

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